文在寅政権の腐敗不正をメディアに漏らして有罪、それは正義なのか【5月19日付社説】

 文在寅(ムン・ジェイン)政権当時、青瓦台内部の不正を暴露した金泰佑(キム・テウ)ソウル市江西区庁長の有罪が大法院で確定した。公務上の秘密漏えいを認定し、懲役1年、執行猶予2年を言い渡した二審判決を大法院が支持したことになる。これにより、金氏は区庁長の職を失うことになった。青瓦台内部の不正をメディアに知らせたことが区庁長職を失うほど深刻な犯罪だという判断だが、一般人の常識や法律に対する感覚では納得し難い。

 青瓦台の元特別監察班員である金区庁長は2018年12月から19年2月まで青瓦台による監察もみ消し疑惑など内部不正をメディアなどに暴露したとして、青瓦台から告発された。暴露に対する報復の意味合いが濃かった。金氏が暴露した内容のうち「環境部ブラックリスト事件」、「柳在洙(ユ・ジェス)元釜山市副市長監察もみ消し事件」などは事実と認定され、下級審で有罪判決が出た。金氏の暴露がなかったならば、そうした不正は永遠に埋もれていただろう。それでも文在寅政権の検察は「特別監査班諜報報告書」など5件を公務上の秘密漏えいだとして起訴し、裁判所がうち4件を有罪と判断した。

 裁判所が有罪と判断した根拠は、金氏が4件を19年1月、国民権益委に腐敗行為として申告をする約1カ月前、マスコミに先に漏らした点だ。このため、公益申告者に認められる正当行為ではなく、公務上の秘密漏えいに当たるというのだ。あまりにも形式的な論理だ。権力型不正は大部分が内部告発で明らかになるが、告発者は権力内部からの報復を懸念せざるを得ない。このため、告発者の大半は自身を保護するため、不正をメディアに暴露する。裁判所の判決はそうした現実を完全に無視したものだ。こんなやり方で誰が内部不正を暴露しようとするだろうか。

 漏えい時に処罰される「公務上の秘密」というのは、それが明るみに出た場合、関連政策の遂行に困難が生じたり、国家安全保障に影響を与えたりする事項を指すというのが常識だろう。公職者の不正や汚職が「公務上の秘密」で、国民が知ってはならないということに誰が納得するだろうか。金氏が暴露したのは、国家政策や安全保障に関わる事案ではなく、国民皆が当然知るべき公職者の不正だった。しかも金氏が暴露した内容はほとんどが事実であることが明らかになり、関係者の相当数が処罰された。公益のために金氏が果たした役割は少ないとは言えない。にもかかわらず、裁判所が一部の枝葉的な内容を問題視し、金氏に懲役刑を言い渡したことは納得しにくい。

 金氏は大法院による判決後、「公益申告者を処罰する民主主義国家がどこにあるのか」と述べた。裁判所の判決よりもこの言葉に共感する人がはるかに多いだろう。裁判所の今回の判決は公益申告制度を後退させ、公益申告者の芽を摘んだものだ。

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