文政権時代に散々な目に遭った金寛鎮元国防相、北の金正日・正恩親子を震え上がらせた罪【コラム】

 吠える軍犬が韓国の金寛鎮(キム・グァンジン) 元国防長官の仮面をかぶった人形を倒してかみつく。北朝鮮軍が金寛鎮長官の顔の下に「金寛鎮の野郎」と書いた標的に向かって射撃訓練をする。そして「金寛鎮のような戦争対決狂信者のために南朝鮮人民が大きな災難に遭うことになる」というインタビューが続く--。北朝鮮は2014年4月、そんな放送を流した。

【写真】北朝鮮の「わが民族同士」が2013年に掲載した金寛鎮国防長官(当時)を狙った犬の訓練写真

 国防長官室に送られた脅迫状には、「金寛鎮は汚い口をむやみに動かしていけない。民族の名で処断する」と書かれていた。北朝鮮の祖国平和統一委員会報道官が「金寛鎮はおかしな妄動をやめろ」という声明を発表した。北朝鮮が大統領でもない特定人物をこれほど執拗(しつよう)に攻撃した例はなかった。 金元長官が目の敵だったことを示している。

 李明博(イ・ミョンバク)元大統領が金寛鎮氏の国防長官内定を発表したのは2010年11月26日だった。北朝鮮による延坪島砲撃から3日後のことだった。金長官は北朝鮮が挑発の口実にしていた西海砲撃訓練を再び実施すると表明した。北朝鮮が再び挑発に出ると脅し、日に日に緊張が高まった。中国とロシアはもちろん、在韓米軍司令官まで自制を求めた。金長官は退かなかった。訓練開始に合わせ、戦闘機にミサイルを装着して出撃するよう命じた。ミサイルを発射せずに帰還すれば、着陸時に爆発の危険があると部下が制止したが押し切った。北朝鮮にもその事実をわざと流した。訓練前日の12月19日、金正日(キム・ジョンイル)総書記が北朝鮮軍指揮部に「軽挙妄動するな」と指示した事実を情報当局がつかんだ。金長官の勢いにおびえて萎縮したのだ。金国防長官の在任中、北朝鮮による追加挑発はなかった。米国防総省はこれを「金寛鎮効果」と呼んだ。金長官は朴槿恵(パク・クンヘ)政権でも留任し、国家安保室長まで務めた。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権が発足すると、「金寛鎮狩り」が始まった。終末高高度防衛ミサイル(THAAD)の追加搬入を報告しなかったという青瓦台の調査がそのシグナルだった。THAADが追加で配備されたことはメディア報道で天下が知る事実なのに、大した隠ぺいでもあるかのように大騒ぎした。軍によるインターネット上での政治的コメント指示、セウォル号事故の隠ぺい、セウォル号事故遺族の査察、戒厳令文書、次期戦闘機機種決定、済州海軍基地の政治的中立違反など金寛鎮氏を狙った容疑が次々と登場した。この疑いが駄目ならあの容疑、それも駄目ならまた別の容疑を探し出した。共に捜査を受けていた李載寿(イ・ジェス)元機務司令官は「金寛鎮について言えというが、ないものをどうやってつくれというのか。切腹でもするか」と訴え、そして数日後、自ら命を絶った。

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