報復と嘲笑が特技の中国「環球時報」、G7サミットにも暴言連発

環球時報は中国では「闘鶏」か、あるいは高度な商業主義か

「(中国・中央アジア首脳会議が開催された)西安には多くの川が流れているが、G7(主要7カ国)サミットが開催される広島は政治の汚物を吹き出している」

 中国メディア「環球時報」の19日付社説は最初からこんな文章で始まる。G7(主要7カ国)サミットを「偽物の多極主義そのもの」と批判し、議長国の日本に対しては「放射能汚染水の放流にこだわり、今や政治のごみまで排出している」と非難した。

【表】環球時報の過激な表現の事例

 19日付の環球時報には低俗な言葉が数多く飛び出したが、これは驚くほどのことではない。国際ニュース専門の同紙は中国でもその極度の民族主義的傾向から「闘鶏」と呼ばれているからだ。米国のウェブ外交誌「ザ・ディプロマット」は環球時報の特徴について「報復、嘲弄(ちょうろう)、ためらいのない脅迫」と要約した。

 嘲弄が特技の環球時報だが、実は中国国内では主要メディアと認識されていない。環球時報は中国にある18の長次官級メディアには含まれておらず、庁局級(局長級)メディアにとどまっている。つまり長官級の人民日報や新華社通信、次官級のCCTV(中国中央テレビ)などと比べるとその権威はかなり低い。官(中央宣伝部)が統制する中国メディアはそれぞれの級が明確に分けられている。

 環球時報はその記事の多くが外信を引用・翻訳したもので、独自のコンテンツは1日2本掲載される社説と4-5本の外部寄稿くらいだ。発行部数は2001年に200万部を突破したが、その後は現状維持が続いている。1993年に中国共産党の機関紙「人民日報」の国際部が発行した新聞からスタートした。

 傘下には英語版の「グローバル・タイムズ」とインターネット版の「環球網」がある。中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」では、「耿直哥(言うべきことは言うタイプ)」という意味のアカウントで、より過激な論調のコラムも発信している。

 環球時報の過激さは初めて見る人には衝撃的だが、読み続ければ陳腐なものだ。「間抜け」「狂った」「悪夢」などの言葉が主に繰り返されるだけだ。2016年に西海で操業中の中国漁船に韓国海洋警察が実弾射撃で警告した際には「韓国は気が狂ったのか」と批判し、THAAD(在韓米軍の高高度防衛ミサイル)による韓中対立が激しかった2017年には韓国に対し「キムチばかり食べて間抜けになった」と侮辱的な言葉を使った。それ以外の国に対しても拳を突きつけるかのように普通に「こいつら」と言う。個人的な感情をむき出しにしたような記事が相次ぐのだ。そのためテーマごとの強弱の調整にも失敗している。かなり過激な言葉を使っても、閾値が高くなるだけでその伝達力や説得力は徐々に低下する。

 ただそれでも中国の愛読者は「読めば味があり、理解しやすい」として環球時報の論調を歓迎している。2021年まで環球時報の編集者を務めた胡錫進氏はウェイボーで「環球時報的な感性」に基づき国内外の問題を過激に論評してきた。そのため今では「中国の陳重権(チン・ジュングォン)」としてその地位を確立した。同氏のフォロワーは2500万人に達するという。

 環球時報の主な攻撃対象は以前は米国、日本、台湾だったが、2016年のTHAAD問題後は韓国もその「ブラックリスト」に含まれた。韓米日の密着が進んだ先月、韓米首脳会談と韓米日首脳会議の期間中に環球時報は「韓国外交の国格が粉々に砕け散った」「韓国外交は深く反省すべきだ」と主張した。これに対して中国駐在の韓国大使館が異例にも環球時報に抗議の書簡を送ったところ、環球時報は「乱暴な干渉だ」として逆切れした。

 「海外メディアが環球時報をたびたび引用するようになったため、環球時報の影響力も高まった」との見方もある。外交安全保障問題に対する中国政府の公式見解は通常だと1日か2日後に発表されるため、外信各社は即座に反応する環球時報のオンライン記事を「中国の立場」として引用することがよくある。環球時報が「中国の本音をうかがい知ることのできる窓口」と認識されているからだ。これに対して中国政府が相手国に対して過激な言葉で圧力を加えようとする時、環球時報を道具として使うようになったとの見方もある。中国外交部(省に相当)は先日、環球時報の韓国批判が問題となった際「関連するメディアの観点は中国政府の立場を反映したものではないが、中国国内の民意は反映している」として環球時報の肩を持った。

北京=イ・ボルチャン特派員



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  • ▲環球時報のシンボルとされる胡錫進・元編集者/ウェイボーより
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