航空機でのテロや危険行為、盾と矛のいたちごっこ【萬物相】

 2001年の9・11テロ後、世界各国の政府と航空各社は航空機の保安規定を大きく見直した。武器になりかねない所持品を厳しくチェックし、操縦席のドアも飛行中は必ずロックした。ハイジャックされた旅客機が操縦室のドアの開かれた状態で飛行していた事実が後から明らかになったためだ。テロ対策は航空機の設計段階から検討され、この結果、操縦室の内側からしかドアを開けることができなくなった。

【動画】非常ドアが開いたまま大邱空港に着陸するアシアナ機

 ところが2015年春に起こったドイツのジャーマン・ウイングス9525便墜落事故は乗客ではなくパイロットによって引き起こされた。機長がトイレに行っている間に副操縦士が中からドアの鍵を掛け、航空機をアルプス山脈に墜落させ乗客乗員全員が犠牲になった。操縦室の安全装置が逆にテロ行為につながったのだ。その後、航空各社はテロ対応マニュアルを再び見直し、操縦室に1人だけとしない新たな規定が加えられた。航空機テロへの対応はこのようにどこから始まるか予測できない、まさに盾と矛の戦いでもある。

 韓国も航空機テロのリスクが高い国とされている。1969年12月に大韓航空の旅客機が北朝鮮にハイジャックされた。この事件を受け保安検査が強化されたが、2年後には23歳の若者が江原道洪川を離陸した旅客機に手製の爆弾を持ち込む事件が起こった。犯人は「北朝鮮に行け」と指示し、上空3000メートルで爆弾を爆発させ、乗務員が犠牲となり航空機の胴体にも20センチの穴が開いた。しかし犯人は操縦室に入ることはできず、機長は航空機を緊急着陸させることができた。1969年の大韓航空機ハイジャックを受け、飛行中は操縦室をロックする規定がすでに導入されていたため、最悪の事態を防ぐことができたのだ。1987年の大韓航空機爆破テロでは液体の時限爆弾が使われていたことが後から明らかになり、その後は機内への液体持ち込みが厳しく禁止された。

 テロと同じく航空機の安全に脅威となるのが機内で乗客が暴れることだ。航空機の特性上、規模の小さい事故でも大きな人命被害につながる恐れがあるため、多くの国が機内で暴れることをテロと同様に厳しく処罰している。昨年米国では「飛行機から降ろしてくれ」と要求して暴れた乗客が機内で逮捕され、8万ドル(1130万円)という巨額の罰金が命じられた。

 大邱空港に着陸しようとしたアシアナ航空機の非常ドアを開け、乗客を恐怖に陥れた乗客が28日に逮捕された。この事故で航空各社は非常ドア横の座席に関する規定を見直す必要が出てきた。アシアナ航空は当分この座席に乗客を座らせないことを対策として定めた。しかしこれは根本的な解決策にはならない。事故を起こした乗客は先日職を失ったばかりで、極度のストレスに苦しんでいたという。このようなリスクまで事前に把握した上での対策も今後検討せねばならないだろう。

金泰勲(キム・テフン)論説委員

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