北朝鮮の核を防ぐPSI海上阻止訓練、韓国野党の目に映るのは自衛艦旗だけなのか【記者手帳】

106カ国が参加する済州PSI会議が契機
野党、国際安全保障協力すら「親日」攻勢

北朝鮮の核を防ぐPSI海上阻止訓練、韓国野党の目に映るのは自衛艦旗だけなのか【記者手帳】

 5月31日、韓国主催のPSI(拡散防止イニシアチブ)多国籍海上阻止訓練「イースタン・エンデバー23(Eastern Endeavor23)」が、天候の悪化で大幅に縮小された。韓国や米国、日本、オーストラリアの艦艇が釜山港からそろって出港し、釜山南方の公海上で通信網点検訓練を行う予定だったが、コンピューターシミュレーションで代替された。これに伴って艦艇の観閲も省略され、「自衛艦旗」を掲揚した海上自衛隊の護衛艦が韓国国防相に敬礼する話は「なかったこと」になった。5月下旬の1週間、韓国野党が「尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は日本軍国主義に見て見ぬふりをしようとしている」と糾弾、批判に熱を上げていたのがこの件だった。

【写真】「脅されるのではと怖かった」…韓国人客が来るや戦犯旗を掲げた日本の民泊

 今回の訓練は、30日に済州島で開幕したPSI20周年高官級会議を契機として企画された。PSIは、大量破壊兵器(WMD)や運搬手段、関連物資の違法な拡散を防ぐため2003年に発足した国際協力体制だ。9・11テロの後、米国の主導によって生み出され、現在は106カ国が参加している。韓国は2009年に95番目の参加国として「遅刻合流」したが、参加するまでは随分と紆余(うよ)曲折があった。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は「北朝鮮を刺激する必要はない」として米国の参加要求を拒絶し、韓米関係悪化につながった。

 そうして発足20周年を迎え、アジアで最初に開かれる済州島会議が持つ意味は格別なものだった。朝中ロの制裁回避が横行している韓国周辺海域で共同訓練を実施するという象徴性も大きかった。韓国の尹錫悦大統領は「北朝鮮の違法な核物資調達に対応するためのパートナー諸国の協力は一層堅固になるべき」と語り、米国のジョー・バイデン大統領は「PSIをさらに拡大し、成長させよう」と述べた。

 だが韓国政界では、こうしたPSIの発足趣旨や海上訓練の目的などは浮き彫りにされず、「旭日旗」論争だけが残った。尹錫悦政権発足後、ほとんど全ての外交懸案に「親日か否か」の物差しを当てはめてきた野党側は「国民の自尊心を踏みにじった」と言い張った。金大中(キム・デジュン)、文在寅(ムン・ジェイン)政権時代も、自衛艦旗を掲げた日本の艦艇が韓国国内に入港する写真が公開されたが、そこには触れない「選択的鑑別」は今回も同様だった。その一方で、PSI直前に行われた北朝鮮の軍事偵察衛星打ち上げ予告については一言半句もなかった。拡散防止が最も切実な国で、北朝鮮の核が後回しにされるという、笑えるけれど悲しい一幕だった。

金隠仲(キム・ウンジュン)記者

<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連ニュース
関連フォト
1 / 1

left

  • 北朝鮮の核を防ぐPSI海上阻止訓練、韓国野党の目に映るのは自衛艦旗だけなのか【記者手帳】

right

あわせて読みたい