政府からカネは受け取らないと言ってこそ市民団体だ【6月6日付社説】

政府からカネは受け取らないと言ってこそ市民団体だ【6月6日付社説】

 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は市民団体に対する国庫補助金に関する監査結果の報告を受け、「不正に対する断罪と回収措置の徹底」を指示した。最近3年間、補助金の流用・横領など不正が計1865件、314億ウォン(約33億7000万円)確認されたからだ。捜査と断罪も必要だが、さらに重要なのは市民団体の活動原則を正すことだ。

【まとめ】「ビジネス」の手段になった歴史問題

 市民運動の核心は「公益」と「自発」だ。「私益」ではなく「職業」でもないという意味だ。政治権力や企業などの問題を指摘するには政治的、財政的な独立維持が不可欠だ。活動資金は当然、理念が共通する者同士で募金したり、自主的な事業を展開したりして調達しなければならない。これは市民団体の大原則だ。国際環境団体「グリーンピース」は政府や企業の支援を一切受け取らず、個人の後援金だけで運営される。医療救護活動を展開する「国境なき医師団」、絶滅危機にある動物の保護活動を行う「世界自然保護基金(WWF)」も個人の会費と寄付金で資金の大部分を賄う。

 ところが、韓国の市民団体は大部分が多かれ少なかれ政府の補助を受ける。昨年は2万7215団体に国民の税金5兆4500億ウォンが投入された。環境、障害者、消費者などのための公益活動を行うとして政府の補助を受けている。慰安婦被害者のケアをするとして支援を受け、資金の私的流用で起訴された尹美香(ユン・ミヒャン)議員が属していた正義記憶連帯も政府の補助金を受け取った。参与連帯は「政府、特定の政治勢力、企業に従属せず独立的に活動する」とし、1998年以後、政府や企業の財政的支援を受けていないと主張する。しかし、政府の補助金監査に対しては「市民団体の活動を萎縮させようとするものだ」と反発した。つじつまが合わない。参与連帯はこの国で多数の有力ポストを得た。文在寅(ムン・ジェイン)政権はまるで参加連帯出身者の宴会場になった。到底市民団体とは言えない。

 政府が市民団体に国民の税金を分配するのは公益性のためだ。政府が細かく管理できない分野の管理を市民団体に委ねているのだ。しかし、今回の調査で問題になった各団体は公益は捨て、私益の追求だけに没頭した。書類をでっち上げて補助金を受け取り、横領して私的な用途に使った。補助金で海外旅行に行き、遊興施設に出入りした。スマートフォンを買い、家族の通信費まで支払った。市民運動ではなく生計活動をしたのだ。

 文在寅政権の5年間、市民団体に対する国庫補助金が年平均4000億ウォンずつ増えたが、管理・監督は疎かだった。政権と市民団体が癒着しているためだ。今も民主党は社会的企業、協同組合など市民運動の生態系に年間7兆ウォンを支援する「社会的経済基本法」の制定を主張している。それを財政の健全性を高める法律とリンクさせている。税金を節約したければ、まず税金を市民運動に分配しろという論理だ。

 政権が市民団体に金をばらまき、御用団体にすることが韓国社会で慢性化した。まともな市民団体ならば、政府のカネはやるといっても受け取らないのが正常だ。先進国のように補助金の代わりに税金減免などで間接的に優遇するのも一策だ。この機会に国庫補助金をこれほど多くの団体に支援することが正しいのかどうか、根本的な問題から再考すべきだ。

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