韓国も海に恥ずかしいものを捨てていた時期があった【コラム】

1988年から27年間、毎年600万トンを投棄
福島汚染水の放流は不愉快なことだが、「安全」という国際判定が出たら隣国の事情に理解も示すべき

 少し前に韓国を訪れたオックスフォード大学名誉教授のウェード・アリソン氏は「処理を経た汚染水であれば1リットル、いや10リットルでも飲める」と語った。生涯にわたり放射線を研究してきた80代の老学者だ。福島の放流水は健康にとって脅威ではないという、心のこもった忠告だったのだろう。彼の著書『Nuclear is for Life: A Cultural Revolution』(2015)は、放射能への恐怖が過剰だったことを立証する研究の紹介でぎっしり埋まっている。

 その中の一つは、放射線治療に成功したがん患者5000人の疫学調査だ。実に29年にわたり追跡調査を行った。放射線治療の際、がん患者らは1カ月または1カ月半かけて、一日1000ミリシーベルトの放射線治療を20回から30回受ける。がんの部位を精密に狙うとはいえ、周囲の正常な細胞も1万-2万ミリシーベルトの放射線打撃を受けることになる。それでも、がん周辺の正常な細胞でがんの2次発生が起きたのは7.4%にとどまったのだ。一般人の線量限界値(年間1ミリシーベルト)の1万倍、CT被ばく量の1000倍以上の放射線にさらされても、結果はこうだった。イヌを対象とした臨床実験では、毎日3ミリシーベルトずつ、5年間で6000ミリシーベルトを当てても大部分は無事だったという。

 放射線は目にも見えず、感じることもできない。全く知らぬ間に体を通過し、10年、20年経過して初めてがんを引き起こすこともあり得るという存在なので、感覚防御が不可能だ。その点が、放射線を過度の恐怖の対象にしたのだ。アリソン名誉教授は、放射線を直接扱う放射線医学の専門家らが乗り出して説明してやるべきだと語った。原子力の専門家らは、利害関係にまみれているとの疑惑をしばしば受ける。放射線医学の専門家は、原子力産業界とは関連がない人々だ。中立的な専門家が説得して初めて、市民を安心させることができる。

 韓国の原子力研究院が、福島汚染処理水を放流した場合に平均的な韓国人の受けることになる放射線量について、高く見積もっても0.0000000035ミリシーベルトだという計算を行った。胸部X線の1000万分の1の被ばく量だ。2021年にこうした評価を学会で公開した博士は、政府の立場に反するという理由で懲戒された。G8(先進8カ国)の一員として先進国メンバーに加わることを希望する国で、こんなことが起きたのだ。線量研究の結果が報じられても、野党指導部は「核放射能物質が海に混じっていたら、誰がホヤを食べるだろうか。のりが汚染されていたら、キムパプ(のり巻き)は何で作るのか」と恐怖マーケティングに熱中している。米国牛の狂牛病やTHAAD(高高度防衛ミサイル)電磁波がそうだったように、福島汚染水の恐怖もむなしいフェイクニュースだということが、結局は明らかになるだろう。相手陣営を悪魔化するための、非常識な政治ゲームに過ぎない。

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  • ▲英オックスフォード大学名誉教授ウェード・アリソン氏。/写真=ニュース1

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