「福島汚染水怪談」が生んだ塩の買いだめ…韓国で塩高騰(上)

「天日塩デマ」により韓国各地で買いだめ急増
政府「安全に関して毎日事情説明する」

 福島原発汚染水の海洋放出に対する不正確な情報があちこちに拡散され、一部の大型スーパーでは韓国産天日塩が売り切れ、インターネット・ショッピング・サイトでも食塩の売上が急増する「塩の買いだめ現象」が相次いでいる。天日塩とは海水を加熱処理せず、太陽の日差しのみで乾燥させて作った塩のことだ。

【グラフ】食塩の販売増加率と塩の卸売価格の推移

 専門家らによると、世間で広がっている「天日塩の恐怖」はほぼデマに近いという。西江大学化学科のイ・ドクファン名誉教授は「トリチウム(三重水素)は水の形で存在し、一般的な水と化学的に同じだ」「天日塩を作る過程で水は空気中に全て蒸発するため、トリチウムの影響を受けることはない」と説明する。

 問題は「怪談」が広がり続けて一般の消費者が影響を受けることにある。大手スーパー「イーマート」によると、今月1日から14日までの食塩の全売上は前年同期より55.6%増えており、特に天日塩の売上は118.5%も増えたとのことだ。同じく大手スーパー「ロッテマート」では1日から14日までの食塩の売上が前年同期比で30%増えたという。ロッテマートの関係者は「この三日間、天日塩を買い求めるお客様が突然、押し寄せてきた」と言った。インターネット・ショッピング・サイトでも食塩は恐ろしいほど売れている。「SSGドットコム」では1日から14日までの天日塩の売上が前年同期より6倍も増えた。

 「天日塩怪談」などが一向に収まらないため、政府は国民に向けて毎日、事情説明を行うことにした。パク・クヨン国務調整室国務第1次長は15日午前、ソウル市鍾路区の政府ソウル庁舎別館で行われた記者会見で、「日本が推進している福島原発汚染水の海洋放出について、国民の皆様と報道機関の懸念がかなりあることはよく分かっている」「科学的事実に基づいた情報を頻繁に提供することが必要だと判断し、意思疎通の窓口として毎日、事情説明を行うことになった」と述べた。

 福島原発汚染水の海洋放出に関する「怪談」が広がり始めた時、真っ先に塩の買いだめに走ったのは、実は一般消費者ではなく仲卸業者だった。事実、一般のスーパーや個人商店、コンビニエンスストアでは食塩の価格が現時点でほとんど変わっていない。

 大手食料品メーカー「CJ第一製糖」の関係者は「昨年8月に食塩の価格は全般的に一度上がったが、その後は上がっておらず、今後も当分の間、上げる計画がない」と話す。ロッテマートとイーマートの関係者も「天日塩は現在、前年と同じ価格で販売している」と言った。

■仲卸業者の間で高騰した塩の価格

 卸売サイトでは天日塩の価格が見るたびに変わっているほど急騰している。「卸売スポット」「すき間マーケット」「日光塩」「ヘイン市場」などの専門卸売ショッピング・サイトでは先月末までは天日塩が20キログラム当たり1万7000-2万ウォン(約1900-2200円)前後で取り引きされていたが、今月初めからは6万ウォン(約6600円)台と約3倍に跳ね上がり、「放射能汚染水放出 秒読み」というニュースが増え始めた12日以降は8万ウォン(約8800円)を上回っている所も少なくなかった。たった二十日間余りで天日塩1袋の価格が4倍に跳ね上がったのだ。

 卸売業者が真っ先に塩を仕入れる所であり、韓国の全国で天日塩を最も多く生産している所でもある全羅南道木浦市・新安郡の水産業協同組合も実際に先日、価格を引き上げた。あまりにも塩を買い求める人が増え、前年より宅配の量が10倍も増えたことから人手が不足し、このため人をさらに雇用することになり、人件費が上昇したからだ。全国の天日塩の85%を取り扱う新安郡水産業協同組合直販売場は8日、「新安天日塩2021年産20キログラム」の価格を2万5000ウォン(約2800円)から3万ウォン(約3300円)へと20%値上げすることを告知した。同協同組合関係者は「現在はこれさえも売り切れて、品物が全くない状況だ」と語った。

宋恵真(ソン・ヘジン)記者、ユ・ジハン記者

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