父のおかげ「アッパ・チャンス」、韓国と日本では何が違うのか(上)【寄稿】

両国で論議を呼んだ「アッパ・チャンス」
撲滅しなければならない重要な理由とは

 韓国選管による「アッパ(パパ)・チャンス」問題に韓国中が沸いている。韓国国民は選管の生ぬるい態度によって、かえって怒り心頭に発している。そんな中、偶然日本でも「パパ・チャンス」の話題がひとしきり話題となっていた。

 韓国ではあまり注目されなかったが、5月29日に岸田首相は首相秘書官の長男・翔太郎氏を更迭した。発端は5月24日、ある週刊誌による暴露だった。首相公邸で翔太郎氏とその親戚たちが長官の「ものまね」をしたり、床に横たわったりする写真が公開されたのだ。

 岸田総理は「厳重注意」を与えたとして事態を突破しようとしたものの、状況は容易でなかった。日本国民の80%近くが翔太郎秘書官の行動には問題があると見ているほか、野党も「公私混同している」「政府を私有化している」と批判した。結局、支持率が急落する兆しを見せると「泣斬馬謖(ばしょく)」(大きな目的のために私情を捨てて部下でも処分すること)に乗り出したのだ。

 実は昨年10月、岸田首相が長男を首相秘書官に任命した時から懸念する声が少なくなかった。日本の首相秘書官は非常に高い地位だ。計8人のうち6人が省庁出身、残りの2人は政務職だが、省庁出身は通常公職歴30年余りの高位行政官僚だ。政務職の2人に1人は、すでに6年前に経済産業省次官を務めた嶋田隆氏。もう一人は岸田首相が政界に飛び込んだ約30年前から共に活動してきた山本高義秘書官だった。昨年10月、岸田首相はこの山本秘書官の座に長男を座らせたのだ。理由は火を見るよりも明らかだ。地方区を譲るための布石だ。

 韓国なら国がひっくり返っていたことだろう。しかし、日本は情緒がやや違う。政務職は政務的判断の下で任命するものであり、どちらにせよ自分の息子だということを隠したこともないため、国民の票で審判を受けるといった考えだ。実際、日本の政界には政治世襲を経た人々が一人や二人ではない。2001年に首相に就任した小泉氏以来ここ22年間、日本には岸田氏をはじめ総勢9人の首相がいるが、このうち6人が父親、または祖父が国会議員だ。

 日本だからといって、政治世襲に対する国民の視線が甘いというわけでもない。特に最近になって政治家4世たちが登場し、家門の力が弱まっている。山口県で衆院10選を果たした河村建夫議員は2021年に引退し、長男に選挙区を譲ろうとしたが失敗した。息子は比例代表に名を連ねたものの落選し、昨年の参議院選挙に再挑戦するも、再び落選した。

 故・安倍晋三元首相の弟である岸信夫防衛大臣も今年2月に引退し、選挙区を息子である信千世氏に譲った。信千世氏は4月の補欠選挙に出馬したものの、首相を3人も輩出した日本最高の政治名門家という後光にもかかわらず、苦戦を強いられた。自民党の票田である父親の選挙区を受け継いだにもかかわらず、苦戦の末の当選だったということは、それだけ政治世襲に対する日本国民の見方が以前とは異なる様相を呈しているということを示す証拠ではないだろうか。


チャン・ブスン関西外国語大学教授

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