違法テント一つ撤去するのに10年、韓国社会における「法治」の現在地【6月23日付社説】

 ソウル市瑞草区庁が、現代自動車グループ社屋前にあった違法テントを、設置から10年を経て撤去したという。委託契約を解除された人が復職を要求して2013年に設置したテントだ。現行法上、自治体の許可なく歩道や車道に設置したテントは違法だ。この人物は形式的にほとんど毎日集会の申告をするというやり方でこの「居座りテント」を維持したが、実際には現場にいない場合が多かったという。集会の申告をしてもテントは違法だ。なのに、撤去はようやく今になってからだった。瑞草区庁はこれまで何度も撤去を試みはしたが、実質的には違法を放置したのだ。

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 こういう違法テントが歩道を占領したのはここだけではなく、きのうきょうのことでもない。2014年のセウォル号惨事の直後、ソウルの光化門広場に設置された違法テントが、ソウル市議会に移っていくまで7年かかった。今も国会前には籠城テントが陣を構えており、ソウル市庁周辺にもコロナワクチン被害者家族協議会が設置した合同焼香所が1年以上も場所を取っている。ハロウィーン惨事遺族協議会も今年2月、デモの途中に突然ソウル広場に焼香所を作り、まだ運営を続けている。紛争が生じると、誰もかれも自治体の庁舎内にまずテントから作るのが日常になり、韓国各地の自治体も頭を抱えている。全て違法だ。

 にもかかわらず行政機関が強制撤去できないのは、その過程で負傷者が発生し、世論に非難されたり訴訟に巻き込まれたりするのを恐れているからだ。実際、違法テントを黙認した文在寅(ムン・ジェイン)政権時代は、ソウル都心に設置された違法テントを撤去した公務員が職権乱用の疑いで検察に出頭させられ、事情聴取を受けたこともあった。違法が合法に勝つという、とんでもないことが起きたのだ。

 今回撤去された現代自前違法テントに関する近隣住民の陳情だけでも、月に100件以上受理されていたという。集会・デモの自由も、他人の日常を害する水準までは許容できない。都心の違法テントをそのまま放置する先進国はどこにもない。違法テント一つにも法を執行できないのが韓国の法治の現在地だ。

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  • ▲5月31日午後、ソウルの世宗大路で、都心集会を終えた全国民主労働組合総連盟の組合員らが焼香所設置を巡って警察と対峙(たいじ)している。警察側は「違法なテントを設置しないでください」と警告放送を行った。/写真=キム・ジホ記者

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