スリーマイル・チェルノブイリ・フクシマ…真実は何か(下)【寄稿】

■トリチウム以外の他の放射性核種に対する懸念

 福島の汚染水は、放流前に多核種除去設備(Advanced Liquid Processing System/ALPS)で反復処理し、トリチウムを除く62の核種を除去した後、放射能排出基準以下で放流することになっている。関連して、参考に値するデータがある。福島の事故直後に太平洋へ流れ込んだ放射性物質は、汚染水の放流に比べ数千倍から数万倍も多かったが、韓国原子力安全技術院が1993年以降継続測定している韓国海域の放射能濃度は、2011年の福島の事故後も有意な変化を示していない。

■日本側の発表内容の信頼性に対する懸念

 日本が正確なデータを出すことは大前提だ。その確証のため、IAEAが計画と手続きをレビューする。日本が提供するデータの検証のため、IAEAは独立的にサンプルの採取と分析を経る。その調査団には韓国・中国などの専門家も参加する。国際基準も国際機構も全て信用できないというのであれば、国際社会の一員であることを放棄するリスクを甘受すべきだ。

■海洋放流を巡る論争

 海の驚くべき自浄能力と経済性ゆえに、各国が大量の汚染物質を海にぶちまけてきた。そこから出てきたのが、1972年のロンドン条約(廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約)だ。それでも、汚染物質を除去した処理水を海水で希釈し、放流基準を充足する場合、海洋放流は国際的に合法だ。その基準を、特定の国が「不法だ」と言うのは難しい。

#4 深刻な原発事故の発生は、確率的に極めて低い。統計上、他のエネルギー源に比べ被害は少ないという形で現れる。しかしそのトラウマは最も深い。目に見えない放射能が長期間にわたって拡散し、その被害ががんや突然変異として現れかねない-という原子力特有の恐ろしいイメージのせいだ。こうした特性ゆえに、情報が歪曲(わいきょく)伝播(でんぱ)される場合、社会的不安は一層増幅され、最終的にその被害は何の関わりもない国民に跳ね返ってくる。科学技術の競争力に優れている韓国で、科学的イシューが政治的に歪曲され、混乱と分裂を生むことは、これ以上あってはならない。そして韓中日3カ国が北東アジア原子力安全のための協力体制を構築し、共に生きる道を開いていくべきだ。福島汚染水処理に対する環境影響モニタリングも地域の共生協力の観点から施行し得る、原子力外交の力量が切実に必要な時期が来ている。

金明子(キム・ミョンジャ)韓国科学技術院理事長・韓国科学技術団体総連合会名誉会長・元環境相

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