空からソウルを見たら「大日本」があるって？　笑わせないでください（下）

　まず「ナムウィキ」（namu.wiki）サイトにある航空写真を見てみましょう。

　一番上に見える北岳山のふもとが「大」の字ですって？　探し絵やマジックアイでもなく、これをどう見れば「大」の字に見えるんでしょうか。山とはもともと、見る位置や角度、見る人の気持ち次第で違って見えるものです。20年前くらいに、新聞社にこんな情報提供（？）がなされたことがあります。「北岳山は実は、高句麗の広開土大王が刻んだ巨大な動物の形の石像だった！」　見方によっては、北岳山の岩々がありとあらゆる動物の形に見えることもあり得る…というところまでは理解できますが、それが自然石ではなく、なぜ巨大な人工彫刻で、その彫刻を施した人物がなぜよりにもよって広開土大王なのかについての根拠は別に見当たりませんでした。

【写真】2008年、太平ホールを撤去する前のソウル市庁舎

　取りあえず譲歩して、あの北岳山の山腹で「大」の字を見つけ出し、日本人がそれをそう読んだとしましょう。だからといって、何をどうしたというんでしょうか。山はひたすら、もともとから山だっただけの話です。「大」の字が見えるのは、北岳山のふもとに景福宮を建てた人たちのせいではないでしょうか。

　次に、「日」の字は中央庁ビルだという点。まず、これが「日」の字なのだとすると、字を90度回転させないと分かりませんね。もしこれを「日」の字と見なすのであれば、近現代に建てられた数多くのビルは全て「日」と読めるでしょう。建物を空から見ると、どのみちほとんどが「□」や「日」、「目」や「田」の字のうちどれかになるはずです。実際、「大」や「本」も同様なのですが、「日」の字のように非常に単純な文字は、世界のどの都市の地図を広げてみても無数に描くことができます。ん？　そうしてみると景福宮自体が「日」の字では？　ああ、太祖・李成桂（イ・ソンゲ）が親日派だったなんて！

　それでも、もしソウル市庁ビルが「本」の字なのであれば、「大日本」仮説はある程度、その実体を認め得るに値するといえるかもしれません。

　これは既に、かなりの部分、専門家の意見が出ています。2008年にソウル市は市庁舎ビル裏手に当たる太平ホールを撤去しましたが、その前の2006年に、こんな文献が文化財研究家のイ・スンウ氏によって公開されました。京城府庁舎ビルの設計に参加していた総督府建築課の技師、笹慶一が1926年、『朝鮮と建築』に書いた記事にこのように記されているというのです。「平面図は敷地の境界に寄せて弓型にし…」。「本」の字ではなく「弓」の字だというのです。笹は「小公洞、南大門路などに予定地が変わるたび、配置図を書き改めた」と言っています。最初から何らかの字を念頭に置いていたわけではなく、敷地に合わせて改めたところ、「弓」の字のようになったのです。

　2006年10月13日付のハンギョレ新聞に載った図を見れば、ソウル市庁舎の平面図はどう見ても「本」の字とは何も関係ないと分かります。一体どうして、あれを「本」の字だと思ったんですか？　「弓」の字と似ているようでもありますが、むしろ、アルファベットのEかFを90度回転させたみたいでもあります。（ひょっとすると、日帝が朝鮮を辱めるためにあえてFの字を使った、という話が出るのではと怖くなります）

　今では、決定的なコメントが出ています。韓国建築史の最高の権威者、金晶東（キム・ジョンドン）牧園大学教授（現在は名誉教授）は当時、このように語りました。「（大日本の字をまねて建てたという）ソウル市の主張は、文献上の根拠が全くない浪説（デマ）だ。当時の敷地の形に合わせて建物を作ったら、ああなったのだ。総督府ビル撤去問題が持ち上がったとき、撤去に賛成する人々が作り出したのだ」

　そうです。結局のところ「大日本」の話は全て真っ赤なうそ、ちょっとマイルドに言えば、怪談だったのです。

　日帝が、いわゆる「民族の精気」を意図的に毀損（きそん）したと見なせる事件は数多くあります。景福宮の殿閣の90％以上を撤去したことを、その一つに挙げることができます。しかし、韓国人が根拠なきデマや怪談を通して「日本人が韓国の特定の地名をあえて変え、韓国の地に大日本の字のような帝国主義の痕跡を残した」と言うことは、進んで自浄すべきです。韓国人は既に、そんなレベルは通り過ぎたのですから。

兪碩在（ユ・ソクチェ）記者