人ごとではない中国の改正反スパイ法【朝鮮日報コラム】

 韓国ではあまり知られていないが、中国で日本人がスパイとして捕まることは割と多い。湖南省長沙で今年2月、50代の日本人男性がスパイ罪で12年の刑を言い渡された。3月には日本の製薬会社の中国法人幹部が北京でスパイ容疑をかけられ、身柄を拘束された。帰国を控えて、ホテルに滞在していた彼がチェックアウトした瞬間、公安が襲ってきたという。免責特権を持つ外交官も例外ではない。昨年2月、北京で日本の外交官がスパイの疑いのある中国メディア関係者と食事をして、あるホテルの一室に連行され、事情聴取を受けた。

 2014年以降、中国で少なくとも17人の日本人がスパイ容疑で逮捕された。具体的な容疑の内容は公開されないが、ほとんどは「中国通」の学者や企業幹部だ。中国の官僚と会って北朝鮮の状況を尋ねた日本人実業家が逮捕された事例もあるという。東シナ海・台湾問題などで中日関係が悪化した時期に逮捕・処罰が集中している。日本は中国との高官級会談のたび、スパイ容疑で収監されている自国民の釈放を要求している。

 しかし韓国人は、これまで中日間の「スパイ紛争」にあまり関心を持たなかった。中国が「スパイカード」で韓国を圧迫したことはほとんどないからだ。外交消息筋は「2014年に中国で反スパイ法が制定されて以降、韓国人がこの法律で処罰された事例はない」と語った。清の時代から日本のスパイに苦しんできた中国が過敏な反応をするのは避けられない、と理解を示す見方すらあった。

 だが今では、人ごとではなくなった。外国人をたやすくスパイとして追い込める「改正反スパイ法」が、7月1日から施行されたからだ。スパイ行為の定義を「国の機密・情報を盗む行為」から「国の安全保障・利益に関連する資料の提供」「スパイ組織に身を寄せる(投靠=とうこう)行為」などに拡大した。「安全保障・利益」の意味はあいまいで、スパイ組織に加入していなくともスパイと見なすことができる。罪を立証できなくても、過料など行政処分ができるように変わった。こうした法律を巡って、中国外交部(省に相当)は「法治国家であるから外国人も中国法を守るべき」と主張した。

 米日との協調を強化する韓国は、改正法の最優先ターゲットになりかねない。北京の在留韓国人社会では「THAAD(高高度防衛ミサイル)報復で韓国圧迫カードをほとんど使ってしまった中国が、韓国人スパイ追及に乗り出すこともあり得る」という声が上がっている。中国では25万の在留韓国人が暮らしており、学者・記者・企業駐在員の数もとりわけ多い。中国で博士課程に進学している在留韓国人らは、既に「中国」をテーマにした論文作りを制限されており、韓国大企業の中国法人は「宗教活動にも気を付けよ」という内部指針を下した。

 「近い隣国」だった韓中の関係は、ますます遠ざかることになった。中国国内の情報持ち出しを防ぐ「データ3法」、他国に対する制裁の根拠を整えた「対外関係法」に続き、改正反スパイ法で企業や個人の中国進出リスクが大幅に高まったからだ。中国に、「竹のカーテン」に続いて「法のカーテン」が掛かっているようだ。

北京=イ・ボルチャン特派員

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