野党になったら反対一辺倒…韓国二大政党のあまりに安易すぎる政治【コラム】

 国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長が韓国を訪れたのは7月7日の金曜日だった。その後の週末は、まさに大荒れだった。グロッシ事務局長が進歩(革新)系最大野党「共に民主党」の議員らと会った9日、福島原発放流反対のデモ隊は韓国国会の囲いを越えて本館にまで入り込んだ。懇談会が行われている最中も「グロッシ・ゴー・ホーム」「放流反対」などを叫び、一部は会議場の窓をたたくことまでやった。既にめちゃくちゃな雰囲気になる中、民主党議員らはグロッシ事務局長の面前で「IAEAが中立性を喪失」「日本の注文通りの調査」というような荒っぽい言葉をぶちまけた。

【写真】「IAEA事務局長の訪韓に反対」…空港で激しいデモを行う市民団体メンバーら

 民主党は、福島での放流が始まれば大変な災厄が迫るかのように語る。しかし、その民主党が与党だった文在寅(ムン・ジェイン)政権は、放流について現政権と同じような立場を取っていた。2020年に、当時の康京和(カン・ギョンファ)外相は「日本の主権的な領土内で行われる事項」だと述べた。翌年、鄭義溶(チョン・ウィヨン)外相も「IAEAの基準を満たす適合性の手続きに沿うのであれば反対することはない」と発言した。福島第一原発の水に含まれる三重水素(トリチウム)は、韓国の民主党が与党だったときは基準値以下で野党になったら災厄レベルに跳ね上がる、魔法とでも呼べるものなのだろうか。

 民主党は、一時「50年、100年政権」を夢見た167議席の巨大野党だ。かつての政権時代と今とで立場が変わったのであれば、韓国国民に対し最低限の理解を求めるのが公党の道理だ。そうした理解を求めるどころか、「核廃水投棄」「セシウムクロソイ」といった刺激的な言辞で恐怖感をあおることにばかり忙しい。苦痛を訴える漁民らの存在は眼中にもない。極端な支持層の反日感情に頼って現政権の支持率をなんとか削り取りたいという、浅薄な政治工学あるのみだ。野党第1党としての国政に対する責任感は全くないように見える。

 保守系与党「国民の力」は、グロッシ氏来韓直後の週末、こんな民主党に向けて終始猛攻を展開した。「デマ麻薬の中毒」「中世暗黒時代の思考方式から抜け出せていない21世紀版天動説」といった表現は、かつての民主党こそ使いそうなきらびやかな修辞だった。しかし「国民の力」もまた、野党時代には福島からの放流に決死反対していた。ある広域自治体長は「ただの一滴の汚染水も容認できない」と言い、ある院内代表は「いかなる理由であろうとも決して妥協する余地はない」と言った。そんな「国民の力」が、水産市場や水族館の水を試飲する様子を、漁民らはせせら笑っている。

 民主党の懇談会でグロッシ事務局長は、大きくため息をついたり、眼鏡を外したりすることもあった。韓国政府の関係者は「IAEAなど国際機関の目に、韓国がどういう国に映るか心配」と語った。韓国は既に、外交・安全保障政策の一貫性を担保し得ない国になった。中国・北朝鮮の顔色をうかがうときは、THAAD(高高度防衛ミサイル)基地を放置していた国が韓国だ。与野党どちらも党派の利益を国益よりも優先し、国民普遍よりも自己の支持層を先にする、安易な政治をしているからだ。ある現役議員は「野党のときは反対だけしていれば楽」と語った。共同体のエネルギーを消耗し、国の国際的信認度をむしばむ、この「楽で安易な政治」。その代価は韓国国民全体と後世の荷として返ってくる。

ウォン・ソンウ記者

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  • ▲ラファエル・グロッシIAEA事務局長。/写真=ニュース1

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