「脱出してください」 地下道水没、最期の瞬間まで窓を割っていた58歳バス運転手 /清州

地下道水没、その時「清州747番急行バス」で何があったのか

「脱出してください」 地下道水没、最期の瞬間まで窓を割っていた58歳バス運転手 /清州

 15日に発生した「地下道水没」の惨事で、犠牲になった「清州747番急行バス」の運転手イさん(58)の祭壇が17日、忠清北道清州市内の葬儀場に設けられた。消防当局は、イさんの遺体を17日午前1時25分ごろ収容したと発表した。イさんは事故当時、バスの窓を割って乗客に避難するように言っていたという。

【写真】水没したバスから脱出、救助される乗客たち

 17日午後、祭壇が設けられた部屋の廊下には、弔問客の泣き声が漏れ聞こえていた。廊下には各バス会社や模範運転手連合会から送られた花輪が立っていた。祭壇の前に立った遺族や同僚たちは目を赤くしてイさんの生前の姿を思い起こしていた。

 同僚たちは「イさんは模範運転手で、周囲の人々に気を配る温かい人だった」と語った。イさんの会社の同僚チェさん(58)は、イさんのことを「ベテランのドライバー」と言った。そして、「タクシー・バス・トラックなど運転経験が非常に豊富で、学ぶべきことが多い同僚だった」「長年にわたり無事故を続けているという実績から道知事賞や市長賞まで受賞した。毎朝、始発時間より2時間早く出勤するほどまじめに仕事をしていて、みんなに認められていた姿が思い出される」「今日は一日、ずっと祭壇のそばを守ってあげたい」と話した。

 事故時、イさんが運転していた「清州747番急行バス」の乗客は「イさんは乗客避難の先頭に立っていた」と語った。今回の事故で死亡したAさん(24)=女性=は友人3人と1泊2日で全羅南道麗水市内に旅行で行くため、五松駅行きの同バスに乗っていて惨事に遭った。Aさんの叔父(49)は「先に五松駅で待っていた友人たちと交わした最後の電話で、バスの運転手さんが『水が入ってきている。窓ガラスを割るから脱出しろ』と言ったそうだ」「その後、めいとの連絡が途絶えた」と当時の状況を説明した。当時、バスの後ろにいたトラック運転手のユ・ビョンジョさん(44)は「バスの運転手は水を抜くために横のガラスを全部割ったが、水が地下道にあまりにもたくさん入ってきたため、バスは地下道の中に吸い込まれていった」と話した。

 イさんが運転していた清州747急行バスは15日、本来のルートが交通規制で渋滞していたため、宮坪第2地下道に迂回(うかい)した。これについて、イさんのいとこBさんは「うちのいとこ(イさん)ならば今回の事故時、うまく対応できたはずだが、人命被害があまりにも大きいため、ややもすると『バスの運転手の判断が間違っていたのではないか』と誤解されるのではないかと慎重になっている」「今回の事故は厳然たる人災だ」と語った。

 今回の事故で死亡したバス乗客のほとんどはバスの中で発見されたが、イさんの遺体は100メートル地点の地下道内で発見された。消防当局関係者は「イさんは懸命になって乗客を救助する際にトンネル内に押し流された可能性がある」と話す。イさんが勤務していた運輸会社のホームページには「乗客を助けようと努力した運転手さんのことを思うと、胸が痛む」など、イさんを追悼するコメントが寄せられている。

チョ・ジェヒョン記者、シン・ジョンフン記者

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