司令官逮捕説・副司令官自殺説…米国の報告書でめった打ちにされた中国ロケット軍

米国の「ロケット軍報告書」が出るや、中国は機密流出の調査に入ったもよう

香港・台湾メディア、「逮捕・自殺」を報道

■「司令官は逮捕、副司令官は自殺」

 7月に入ってからは、中国ロケット軍の副司令官、呉国華中将が7月6日に自宅で自ら命を絶ったという報道が出ました。台湾のインターネットメディア「Newtalk新聞」は「中国軍は内部に『呉国華中将は脳出血で死亡した』と通知したが、首をつって自殺したと伝えられている」と報じました。

 香港の明報紙は7月13日、通信情報や諜報(ちょうほう)、電子戦などを総括する人民解放軍戦略支援部隊司令官の巨幹生上将もこの事件に関与した、と伝えました。

 中国軍は軍内部の粛清問題について、一切確認も否定もしません。この事件も同様です。中国国内の報道機関やソーシャルメディアには、関連のニュースは全く出てきません。

 ただし、中国内部のニュースに詳しい香港の明報などが継続して報じていることから見て、フェイクニュースではないようです。

■中国ロケット軍を解剖した米空軍の報告書

 ロケット軍粛清に関連して、幾つかの推測が出ています。ロシアの雇い兵企業「ワグネル」グループの反乱を目の当たりにして中国軍引き締めに乗り出した、という見方もあります。しかし、陸軍でもない、戦略ミサイル部隊がクーデターを起こすというのは可能性が小さいように思えますね。

 習近平主席の任期延長が確定した昨年10月の中国共産党第20回党大会の直後、米空軍大学(Air University)の中国航空宇宙研究所(China Aerospace Studies Institute/CASI)が、非常にボリュームのある中国ロケット軍関連の報告書を公開したことがあります。ロケット軍の組織構成、各級部隊の指揮官と主な幹部の名前・写真、ロケット軍基地の位置、配備されたミサイルの種類と戦力評価などが網羅された、255ページもある報告書でした。衛星写真だけでは容易につかめないハイレベルな情報でした。姚誠・元中国海軍中校は「こうした水準の全面的な情報は下級幹部から出てくることはあり得ない」とし、米国に機密が流出した経緯についての調査だろうと分析したのです。

 今年2月に米国上空で撃墜された、中国の偵察気球事件に関連があるという分析もあります。この事件を党上層部に報告する過程に問題があったというものです。

■諜報・電子戦分野出身を集中的に調査

 このところ粛清説が出ている将官らの特徴は、主として情報や諜報、通信分野に携わっていた人々だという点です。自殺したといわれる呉国華中将は電子情報収集、サイバー戦などを担当する人民解放軍総参謀部第3部(技術偵察部)の部長を務め、巨幹生・戦略支援部隊司令官にも同部副部長の経歴があります。

 張振中・劉光斌中将はレーダーや電子戦などに関する専門家です。張振中中将は酒泉・西昌・文昌衛星発射基地の責任者などを務めました。劉光斌中将はミサイル電子システムなどの開発を担当してきました。李玉超ロケット軍司令官は一線のロケット軍部隊長として成長してきた人物ですが、米国留学中の息子の問題が引っ掛かっているといいます。

 政治の経歴がない科学者や技術者、情報収集の専門家出身の将官らが調査対象という点から考えて、今回の事件はかつてのような腐敗などの問題ではなく、ロケット軍の内部情報が米国に漏れた過程を明らかにすることに焦点を合わせているものとみられます。米空軍の1編の報告書が、中国の戦略ミサイル部隊を荒地にしてしまったことになります。

 香港・台湾メディアに出てくるこうした報道の真偽は、間もなく確認されるものとみられます。ロケット軍と戦略支援部隊は、陸・海・空軍と共に中国の5大軍種をなす中心的な部隊です。こうした部隊の司令官らが調査を受けているからと、長期間空席にすることはできないでしょう。問題があれば、8月1日の中国建国節を前に大規模な人事措置があるはずだと、中華圏の専門家らはみています。

崔有植(チェ・ユシク)東北アジア研究所長

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