NYT紙は「スターリンクについての懸念を米国政府に表明している国は9カ国以上」と伝えた。こうした国々は、マスク氏が特定地域や国家のインターネット接続を拒否したり許可したりすることにより、戦略資産である衛星インターネットで権力を行使している、と主張する。マスク氏がいつでもスターリンクの情報にアプローチできることも問題だ。彼は今年4月、ツイッターに「テスラ、スターリンク、ツイッターを利用して私は誰よりも多くのグローバルなリアルタイム経済データを頭に収めることができる」と誇示した。チョ・テゴン韓国科学技術院(KAIST)経営学部教授は「400万台を超えるテスラ車の運行データ、リアルタイムで入ってくるスターリンクの通信データ、毎日数億人が使うツイッターのデータを一人の人間が握っていることになる」と語った。
■米国政府最大の悩みの種
テック(技術)業界では、マスク氏の影響力はますます拡大するだろうとみている。マスク氏のスペースXは米航空宇宙局(NASA)と共に月・火星探査を主導しているが、これといった対抗馬はいないほど圧倒的な技術力を持っている。マスク氏が、人類の未来の懸かった宇宙探査市場も独占しているのだ。最近では、人工知能(AI)関連企業「xAI」を設立し、オープンAIのチャットGPTやグーグルのBardをしのぐAIを作ると宣言した。ツイッターを金融・経済・配車などを融合したスーパーアプリとして育てていく作業も進めている。地下車道を建設し、超高速列車「ハイパーループ」を走らせる「ボーリング・カンパニー」、人の脳にチップを移植して仮想空間に移す「ニューラリンク」といった事業も進めている。一つ一つが全地球的な波及力を持つプロジェクトだ。ブルームバーグ通信は「世界に帝国を構築し、ますますコントロールしにくくなっていくマスク氏は、米国にとって最大の悩みの種」と評した。
ファン・ギュラク記者