「世界スカウトジャンボリー」一発で国から予算2800億円を獲得した全羅北道、その見返りは「恥さらし」【8月10日付社説】

 ボーイスカウト・ガールスカウトの祭典「第25回世界スカウトジャンボリー」のずさんな運営は、女性家族部をはじめとする韓国の中央部処(省庁)の責任と共に、ジャンボリーを招致した全羅北道の責任も大きい。全羅北道知事はジャンボリー組織委員会の執行委員長を務めている。大会の成功に関心を注いでいれば、目の前で起きている準備不足の状況にこれほど無関心でいられないだろう。会場を行き来する現場スタッフが「こんなところでキャンプをするのか」と心配した時も全羅北道は知らん顔をしていた。オリンピックとは違い、ジャンボリーは会場の造成が難しいわけでもない。今考えてみると、全羅北道は当初からジャンボリーをうまくやるのが目的ではなかったように思える。ジャンボリー招致を大義名分に、韓国政府から巨額の予算を獲得するのが主な目的だった。だから問題が起こらない訳がなかったのだ。

【写真】会場清掃作業ボランティアに駆けつけた全羅北道の住民たち

 全羅北道は2015年、江原道高城郡を破って韓国国内の招致候補地に決まった。それ以降、「ジャンボリーをセマングム干拓地開発の起爆剤にする」という全羅北道の考えを歴代政権はすべて支援してきた。招致決定時、ジャンボリーの会場はまだ開発が済んでいない干潟だった。このため、全羅北道内でも反対が多かった。既に造成が済んでいたセマングム内のほかの用地に木を植え、基盤施設を設置していたら問題はなかっただろう。しかし、こうした警告や懸念の声を無視して干潟を干拓地化する無理な手段を取った。干拓工事は2020年に始まり、ジャンボリー開催8カ月前の昨年12月になってようやく終わった。事前チェックのため昨年8月に行うはずだった「プレ・ジャンボリー」も開催2週間前に突然中止になった。新型コロナウイルス感染症の流行拡大を口実にしたものの、実は排水施設などが備わっていないためだった。その結果、木が1本もなく、水はけの悪い泥だらけの干拓地で国際的な一大イベントが開催されたのだ。

 韓国は世界中に恥をさらしたが、全羅北道はジャンボリーをきっかけに少なくとも2兆6000億ウォン(約2845億円)規模の直接的・間接的予算という恩恵にあずかることになった。ジャンボリーに必要なメーンセンターの建物には480億ウォン(約53億円)の予算がかけられたが、ジャンボリーまでに完工もできなかった。完工は来年の予定だ。干拓費用2000億ウォン(約220億円)や、1000億ウォン(約110億円)を超えるジャンボリー予算のほかにも、ジャンボリー招致後に着工された高速道路には4239億ウォン(約464億円)の予算がかけられ、これに関連する道路建設に約1兆1000億ウォン(約1204億円)が追加投入される予定だ。2029年開港目標のセマングム国際空港にも8077億ウォン(約884億円)が投入される。今、誰がこれに納得するというのだろうか。

 国際的なイベントをエサに大規模な国家予算を獲得する自治体の「一発主義」は今回が初めてではない。全羅南道霊岩郡のフォーミュラワン(F1)サーキットは税金4300億ウォン(約470億円)をつぎ込み、世界で大恥をかいて終わった。光州広域市は2019年の「第18回世界水泳選手権」招致合戦で公文書偽造までした。こうしたことはセマングムでのジャンボリーで終わりにしなければならない。

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  • ▲8日、全羅北道扶安郡セマングムの「第25回世界スカウトジャンボリー」キャンプ地でテントを撤去するスカウト隊員たち。写真=聯合ニュース

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