開城工業団地を中国に売り渡すのか…北朝鮮、無断稼働の次は投資誘致の試み(下)【寄稿】

開城工業団地を中国に売り渡すのか…北朝鮮、無断稼働の次は投資誘致の試み(下)【寄稿】

 核兵器開発の本格化に伴って、国連の北朝鮮制裁も11件発効した。経済協力が政治的和解をもたらすという機能主義(functionalism)アプローチは限界を迎えた。工業団地の稼働中断に失望したのか、2020年6月に北朝鮮は、開城工業団地内にある235億ウォン(約26億ウォン)が投じられた南北共同連絡事務所を電撃爆破した。連絡事務所のすぐ隣にある開城工業団地総合支援センターもひどく壊れた。

【表】開城工業団地の中断に伴う企業被害の内訳

 北朝鮮が開城工業団地内の韓国資産を無断で使っている状況は、衛星写真や北朝鮮の国営メディアを通して捕捉され続けている。最近、統一部(省に相当)が開城工業団地無断使用について強く警告したにもかかわらず、北朝鮮は逆に開城工業団地内の工場稼働をおよそ30カ所に拡大した。北朝鮮が開城工業団地内の韓国資産を無断で使い、「CUCKOO炊飯器」を作って平壌のデパートなどで売っている―と、自由アジア放送(RFA)が5月に報じた。

 北朝鮮の開城工業団地無断稼働は「小を貪(むさぼ)り大を失う」行為だ。北朝鮮は2012年の金正恩(キム・ジョンウン)政権樹立以降、経済特区をおよそ20カ所指定して投資誘致に熱を上げている。数百ページに達する経済協力合意書を紙切れにする工場無断稼働は、「投資保障に関する合意書」と「開城工業地区法」に違反するものだ。基本的な投資や紛争解決の手続きも守らない北朝鮮に投資をする企業を探すのは、「井戸で飯釜の湯を探す」ようなもので、順序が違う。

 統一の呼び水という大義名分で巨額の投資を行った開城工業団地は、平壌が非核化を模索しないのであれば、統一後を期するしかない。「統一鍋」のように一瞬だけ熱くなった開城工業団地は、一瞬で幕を下ろした。北の主張の通り、政治・軍事分野の「根本問題」解決なしに経済協力を成功裏に進めるというのは「話にならない(語不成説)」ものと化した。無断稼働は、情勢が安定すればもしかすると開城工業団地が再稼働するのでは、と期待していた企業関係者らの胸に太いくぎを打ち込んだ。北朝鮮は中国企業を相手に、開城工業団地への投資および事業を誘致しようと試みている。思うように進まない場合には、韓国企業の施設を無断使用するにとどまらず、中国に売り渡そうという試みまで検討している-とのうわさだ。

 統一部は「開城工業団地無断稼働」を巡って北朝鮮への損害賠償請求訴訟を検討しているが、工業団地の生まれながらの限界ゆえに実効性は低い。韓国の管轄権の及ばない北朝鮮地域に工業団地が位置していることがすっきりせず、結局は足を引っ張った。砂上の楼閣の運命は既に予見されていたのに、民族がイデオロギーより優先し得るという幻想で巨額の南北経済協力基金をつぎ込んだ挙げ句の末路だ。

 今年5月、観光公社と現代峨山が投資した金剛山ホテルや金剛山駅などの施設が北朝鮮側によって完全に撤去され、跡形もなく消えてしまった。2019年に金正恩が現場視察で「みすぼらしい南の施設をさっさと運び出せ」と指示した結果だ。野心を持って推進していた経済協力は、今や歴史の中に消えた。ロマンチックなアプローチに対する原因分析が必要だ。

 祖国ハンガリーで社会主義を体験し、ハーバード大学で講義をしていた大学者コルナイ教授は、名著『社会主義政治経済理論』(ママ)で、体制と権力の本質的な変化が生じて初めて社会主義国との経済協力が成功し得る、と診断した。大学者のアドバイスから離れても、常識的に判断が可能な話だ。だが選挙のたびに、票を集めるためのポピュリズム的扇動が南北関係でも横行し、試行錯誤を繰り返している。

南成旭(ナム・ソンウク)高麗大学統一外交学部教授・元国家安保戦略研究センター長

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