尹大統領のワシントン宣言に不快感表明…「外交王」文在寅の北朝鮮愛(下)【寄稿】

 2019年6月30日に板門店で起きた、いわゆる「トランプの戸締まり」は、ここに起因する。覚えているだろうか? 「自由の家」からトランプが出てきた後、警護員がドアを閉めるのだが、閉められる瞬間、文大統領がばつの悪そうな表情をして立っていた場面を。文大統領が「自由の家」で待機している間、トランプは北から歩いてきた金正恩と「マイ・フレンド」と言いながら握手をして、軍事境界線を越えて一緒に北へ行った後、和気あいあいと対話を続けた。このところメディアが尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に当てはめている基準を当時のこれに適用するとしたら、「外交惨事」論争が国中をひっくり返しただろうが、民労総(全国民主労働組合総連盟)の言論労組に掌握されたメディアは、これに特別な意味を付与しなかった。さらには、ある極端な支持者は次のようなコメントで「精神勝利」をした。「文在寅、金正恩、トランプのうち一人でも欠けていたらこんな事件は起きなかったろう」

 それから1年後に出版された、ジョン・ボルトン元大統領補佐官の回顧録には、この件に関する生々しい話が載っていた。「トランプは文大統領が近くにいないことを望んだが、文大統領は頑強に出席しようとして、可能であれば三者会談にしようとした。会談当日の午前、青瓦台で開かれた韓米首脳会談で、米国側は文大統領の参加を何度も拒絶したという。しかし文大統領は『取りあえず板門店内の哨所まで一緒に行ってから決めよう』と同行を要求し、結局貫徹した」

 いくら強い片思いだとしても、相手が拒絶し続けるのであれば、大抵はその恋を諦める。ごく一部では、ストーキングし続けたり犯罪に手を染めもするが、世間はそれをこう呼ぶ。「誤った愛」。文大統領の北朝鮮愛がそれだった。年齢もだいぶ下の金正恩からさまざまな侮辱を受け、「ゆでた牛の頭」とまで言われたて笑い者にされたが、北朝鮮に対する文大統領の愛は揺らがなかった。恋をしたら贈り物をしてあげたいと思うもので、北朝鮮にとって最大の贈り物は終戦宣言だった。それが実現してこそ「米軍撤収」を堂々と主張できるし、その場合、韓半島赤化の夢も実現できるからだ。

 残念ながら、その贈り物は文大統領の力では得られなかったので、文大統領は外遊に出かけるたび、首脳らに終戦宣言を泣訴しなければならなかった。国連総会に行ったとき、オーストラリアとフランスに行ったときなどなど、文大統領は外遊に出かけるたびに終戦宣言を頼んだ。これには金正淑(キム・ジョンスク)夫人も加わった。イタリアの首相夫人と会った際、「教皇に、訪朝と共に終戦宣言を支持してほしいと要請した。夕食会でお会いできる(夫の)ドラギ首相にも特にお願い申し上げたい」と言ったのだ。何かあると金建希(キム・ゴンヒ)夫人に向けて「誰が大統領なのか」と叫ぶ韓国左派は、当時、金正淑夫人のこの発言に対し奇異な沈黙を守った。

 夫婦総動員のこの片思いは、米国が特に関心を示さなかったことで水泡に帰した。尹大統領が北朝鮮の核を防ぐためワシントン宣言を発表した今年4月27日、文氏は次のような声明で不快感をあらわにした。「手遅れになる前に南と北、国際社会が対話復元、緊張解消、平和の道に乗り出すことを望む。何より心配なのは、状況を安定的に管理するための真剣な努力は見せず、むしろ競争するかのように互いを刺激して敵対視し、不信と反目が一層深まっていることだ」。文さん、今の韓半島が不安ですって? ならそれは、全くもって北の核が原因であって、これは「北朝鮮の非核化の意志を信じる」と世界を相手にうそをついたあなたのせいでもあります。

ソ・ミン壇国大学寄生虫学科教授

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