「ドルに取って代わる」と豪語していた人民元の凋落【コラム】

 国際投資家は昨年後半以降、中国の国債市場や証券市場から資金を引き揚げています。昨年第3四半期に1440億ドル、第4四半期に1068億ドルが流出し、今年第1四半期にも820億ドル相当の人民元資産を処分しました。人民元建ての資産を売りドルが買われることで、人民元の価値が下がり続けているのです。

 中国経済の先行きが悲観的であることも人民元安の重要な要因と言えます。今後中国経済がさらに悪化すれば、人民元の価値がさらに下がるはずだから、早めに処分して為替差損を減らそうというわけです。

■ロシア、45億ドル相当の人民元処分

 面白いのは、中国とともに「ドルからの脱却」を叫んでいたロシアが人民元を大規模に処分していることです。ロシアは昨年、対中貿易で354億ドルの黒字を上げました。人民元建てとルーブル建てで取引したので、それに相当する巨額の人民元がロシアに渡ったのです。今年も年初来5月までに80億ドルの黒字を出しました。

 ロシアは貿易で得た人民元のうち45億ドル相当を昨年1年間に売却しました。国内の為替市場でルーブルに変えた分があるほか、中国の国有銀行の口座を経由し、欧米の債権者に送金を行ったということです。人民元を売って確保したルーブルで財政の不足分を補ったほか、人民元を海外の債権者に対する債務返済にも使ったのです。今年に入っても毎月数億ドル相当の人民元を売却しているといいます。現在外貨準備高に占める人民元は約30億ドルにすぎないとされます。

 中国国内ではロシアが人民元を大量売却することに対する不満があふれています。中国にとっては、人民元を保有し続け、中国商品の輸入代金に使ってもらいたいというのが本音でしょう。

 一方、ロシアは中国がロシア国内で流通するのに十分な量の人民元現金を供給していないことに不満があります。そのため、自国通貨のルーブルやドル、ユーロなどに交換して使うしかないという言い分です。それに国際制裁のせいでドルを使うことができず、人民元を代用として使ってはいますが、長期保有する価値のある通貨だとは考えていないのです。

 もちろん1日で数千億ドルに上るオフショア人民元の取引規模からみて、ロシアの人民元売りが人民元相場に大きな影響を及ぼすことはないでしょう。しかし、人民元がドルに取って代わると信じてきた中国国内の国粋主義者にとっては、ロシアの人民元投げ売りが相当なショックとなっているようです。

崔有植(チェ・ユシク)東北アジア研究所長

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