中国・ロシアの方ばかりを見ていて「欧州の病人」と化したドイツ

中国市場を信用していたが輸出不振
ロシアに依存してエネルギーが急騰

 8月1日(現地時間)に訪れた、ドイツ・ベルリンの「ニオハウス」。ベルリンの中でも富裕層が集まる代表的な場所、クアフュルステンダム(クーダム)の中心部に位置し、延べ床面積2200平方メートル(およそ665坪)規模の3階建ての建物だ。このビルは、中国の電気自動車(EV)メーカー「NIO(蔚来汽車)」が昨年末、ドイツで初めてオープンした場所。ショールームからカフェ、会議場まで備えたこの売り場を、1日およそ1000人が訪れる-と従業員らは話した。ドイツの自動車専門メディアは、中国の電気自動車が最近、品質力の向上と共に低価格を打ち出してドイツ車に代わる魅力的な選択肢になっている、と報じた。

【図】ドイツが「欧州の病人」と化した三つの理由

 欧州最大の経済大国ドイツが、欧州最悪の経済難で大変な状態になっている。国際通貨基金(IMF)が7月25日に発表した世界経済展望報告書(World Economic Outlook)によると、ドイツの今年の経済成長率見込み値はマイナス0.3%で、先進7カ国(G7)の中では唯一、マイナス成長が予想されている。エネルギー価格の上昇に伴う製造業ショックが雇用市場を直撃する中、消費者物価が高止まりして内需市場も冷え込んでいる。ドイツ経済が依存してきた製造業が中国などに押されて競争力を失っている点も、経済回復が遅れている要因だ。

 しかも、ベンツ・BMW・アウディなどに象徴されるドイツの自動車市場が、中国に急速にその座を明け渡しつつある。中国産の電気自動車BYDは昨年10月、ドイツに進出した。経営コンサルティング企業のアリックス・パートナーズによると、今年第1四半期における世界の自動車販売台数は中国が107万台で、ドイツ(84万台)を上回った。同社は、今年中国が自動車販売で業界1位になると見込んでいる。

 世界最大の化学メーカー、ドイツのBASFは今年2月、本社でのアンモニア生産を中断すると発表した。天然ガス価格があまりに高く、もはやドイツでは収益が出ないからだ。生産中断の発表とともに、2600人を解雇した。貿易依存度が高い中国のリオープニング(経済活動再開)効果が微々たるものだった点も、ドイツにとっては悪材料だ。経済協力開発機構(OECD)によると、2019年現在のドイツの国内総生産(GDP)比で見た製造業の比率は19.1%。韓国(27.5%)と同じで製造業の比率が高く、最大の需要先である対中依存度が高い点も同じだ。中国海関総署(税関)によると、今年1月から6月のドイツの対中貿易額は1058億9560万ドル(現在のレートで約15兆円。以下同じ)で、欧州連合(EU)全体の対中貿易額(3991億7200万ドル=約56兆5800億円)の26.5%に達する。

 ウクライナ戦争後、エネルギー輸入を依存してきたロシアからの天然ガス供給が途絶えるとエネルギー価格が跳ね上がり、ドイツのインフレは深刻な水準を脱することができずにいる。8月1日にドイツ連邦統計庁が明らかにしたところによると、ドイツの消費者物価上昇率(前年同月比)は5月の6.1%から6月は6.3%に上がった。同じ期間に、ユーロゾーン(ユーロ使用20カ国)の消費者物価上昇率が6.1%から5.5%に下がったのとは対照的だ。エネルギー価格暴騰の余波で、公共交通の物価上昇率は112.8%に達した。

 物価が高止まりしていることから、消費者は財布の口を閉めている。ドイツの国民的なおやつ「ケバブ」の価格は、1年前の時点で6ユーロ(約936円)前後だったが、最近は10ユーロ(約1560円)の水準に上がった。肉や魚などをふんだんに使った食事を享受できるのは2日に1度だけというドイツ人が、昨年の時点で11.4%に達する、という調査結果も7月31日に公表された。EUの統計機関ユーロスタット(Eurostat)の調査結果だが、前年の時点で10.5%だったこの比率が、1ポイント近く上昇した。シュピーゲル紙の報道によると、最近あるアンケート調査で、ドイツ人の25%が「今年の夏休み費用を捻出できない」と回答した。

ベルリン=チェ・アリ特派員、チョン・ソクウ記者

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  • ▲8月1日(現地時間)、ドイツ・ベルリンのクーダムに位置する中国の電気自動車メーカーNIOの「ニオハウス」の様子。3階建てのビルで、内部にはカフェなどがある。/写真=チェ・アリ特派員

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