輸出40%減 EV時代に逆行した自動車大国ドイツが「欧州の病人」と化した三つの理由

「ドイツ社会全体があまりに世間を知らず、純真でした。自分たちの前に変化が迫ってきたのに、皆、それを理解しているのかどうか分かりません。今直面している問題は、これまで累積してきたものなのです」

【図】ドイツが「欧州の病人」と化した三つの理由

 ドイツに本社を置く世界最大の化学メーカー、BASFのマーティン・ブルーダーミューラーCEO(最高経営責任者)は最近、ブルームバーグのインタビューでこのように語った。世界の主要国が新型コロナのパンデミックやウクライナ戦争などのショックに耐えて立ち上がる中、独り沈滞の沼にはまっているドイツは、今や「欧州の病人」扱いを受け、心配の種として浮かび上がっている。製造業の革新を主導して世界の産業化の心臓である役割を果たしてきたドイツ経済が泥沼にはまり込んだことを巡っては、大きく三つの点が敗因として挙げられる。過度の中国依存、脱原発一辺倒で推し進めたエネルギー政策、そして主力産業の競争力で後れを取っていることだ。

(1)高すぎる中国依存度

 かつてドイツ経済は、競争力の高い輸出企業のおかげで、外部からの衝撃が来ても急速に回復する恐るべき弾力性を示していた。中国経済が高速成長していた2000年代には、特にそうだった。ドイツ経済に活力を与えていた中国との貿易規模はますます増大し、この7年間、中国はドイツの最大の貿易相手国だった。ドイツの対中交易規模は、2021年の2450億ドル(現在のレートで約34兆7300億円。以下同じ)から、22年には3178億ドル(約45兆500億円)と30%も増え、依存度は一層高まっていった。

 だが今や、中国を主要パートナーにすることはドイツにとって「毒」となった。今年初め、中国が新型コロナによるロックダウンを解除してリオープニング(経済活動再開)に乗り出し、その最大の恩恵はドイツが受けるとの見方があった。しかし、そうした期待は見事に外れている。中国の回復傾向は顕著なものではなく、依存度が高いドイツ経済が直撃弾を浴びたのだ。最近、国際通貨基金(IMF)が主要国の中で唯一、ドイツの今年の成長見込みを引き下げたのもこれが理由だ。

(2)エネルギー政策の失敗

 昨年始まったロシア・ウクライナ戦争は、ドイツ経済が持つ構造的問題を如実に見せつける契機となった。戦争直前、ドイツは天然ガスの55.2%、石炭の56.6%、石油の33.2%をロシアから輸入していた。しかし戦争で西欧はロシア制裁に乗り出し、ドイツはロシア産エネルギーの利用を突如として中止しなければならなかった。

 ドイツは過去およそ10年間にわたり脱原発を推進してきたが、その渦中で突如ロシア産エネルギーの供給中断という事態に見舞われ、昨年、電気料金が10倍に暴騰するなどエネルギー危機に直面した。ドイツは最近、最後に残った原発すら稼働を停止し、今では発電原価が高いエネルギー源で電力を生産しなければならない。ドイツの産業用電気料金は、ドイツを除く他のG7(先進7カ国)に比べ2.7倍も高い。高価な電気料金は製造原価に跳ね返り、輸出競争力の低下は避けられない。

(3)後れを取っている主力産業の競争力

 「技術のドイツ」の誇りにして最大の輸出品目である自動車産業は、最大の危機にある。長い間、ドイツ車は内燃エンジン車時代をけん引していた。だが新たな流れとなった電気自動車時代においては、劣等生に近い様相を見せている。

 市場調査機関SNEリサーチによると、昨年の電気自動車市場のシェアは米国のテスラ(16.4%)、中国のBYD(11.5%)、中国の上海汽車(11.2%)に続き、ドイツのフォルクスワーゲンが4位(7.2%)だった。ドイツは昨年265万台の自動車を輸出したが、これは頂点だった2016年の441万台に比べ60%の水準に過ぎない。フォルクスワーゲンのトーマス・シェーファーCEOは今年7月、内燃エンジン車から電気自動車先導企業へと転換するには困難があるとし「屋根が燃えている」と語った。時代の変化に素早く対応できないドイツ産業の危機をあらわにする一断面だ。

金垠廷(キム・ウンジョン)記者

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