「韓国卓球界の神童」19歳シン・ユビンはなぜ今も中卒なのか【コラム】

学生選手の欠席認定日数増やしたのはスポーツ界の現場の不満を反映した措置
選手引退後の人生も考慮せねば…スポーツをする権利と学習権の調和努力が必要

 中国・杭州で来月開催予定のアジア大会に向けて練習している「卓球の神童」シン・ユビン(19)=大韓航空=の最終学歴は中学校卒業だ。韓国卓球史上最年少(満14歳11カ月)で韓国代表になったシン・ユビンは卓球に専念するため高校進学をあきらめた。当時、シン・ユビンの足を引っ張った規定は「1年間スポーツ競技(トレーニング・大会参加)を理由に授業に出なくてもいい」という欠席可能日数だ。かつては授業日数の3分の1程度(63-64日)まで欠席が許容されていたが、文在寅(ムン・ジェイン)政権が「学生選手の『人権と学習権』を保障する」という理由で欠席可能日数を減らした。昨年の欠席可能日数の基準は小学生5日間、中学生12日間、高校生25日間だった。これを超えれば留年・停学・退学などになる可能性がある。スポーツ界関係者らは「現実を知らずに言っている話だ」と反発した。5日間(小学生)では全国規模の大会に一度参加すれば終わりだ。それ以上は大会参加を夢見ることすらできない。「監督たちの最も大きな悩みは相手の戦力ではなく出席日数だ」という言葉も聞かれる。シン・ユビンも昨年の規定通りなら、学校に通いながら大会に頻繁に出場することはできなかった。

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は「過去のスポーツ革新委員会で明らかになった『机上のポピュリズム(大衆主義)』を排除し、現場を中心に考えて正常化する」として、これを覆した。欠席可能日数は今年から小学校20日間、中学校35日間、高校50日間にまで拡大された。2025年までにはこれを「文政権以前」並みの63日間まで増やす計画だ。

 現場の声を無視して一方的に推し進められた前政権の「勘違い」を現政権が正したまでは良かったが、問題はその次だ。韓国の学生スポーツ選手は7万人を超える。「学生」選手とはいえ、事実上はスポーツに人生をかけた「プロ」だ。しかし、彼らが運動で生計を立てるのは容易でない。プロ選手になる関門は実に狭い。野球やサッカーを考えても、プロチームに入れるのは10人に1人だけで、他の選手たちは行き場がない。大韓体育会の「最近5年間の引退選手実態現況」という資料を見ると、韓国のスポーツ選手の平均引退年齢は23.6歳だという。ちょうど大学を卒業して社会に入らなければならない時期だ。選手たちは実力が足りないことを痛感した上での自らの意思であれ、入るチームがないという他人の意思であれ、スポーツをやめたら路頭に迷ってしまう。引退後、無職になった人は調査対象者のうち41.9%だった。若年層の失業率が8-9%なので、それよりも4倍近く高い。苦労して仕事(建設業・自営業・日雇いなど)を探しても46.8%は最低賃金水準である月200万ウォン(約22万円)以下しか稼げていない。

 スポーツ選手だからといって特別待遇しようというわけではない。しかし、彼らが運動部という閉鎖された可能性の中で青少年時代を過ごした後、対策もなく社会に放り出される構造には問題がある。スポーツ選手が小学生のなりたい職業1位という社会で、漠然とした憧れを抱いて運動の世界に飛び込んではみたものの、後になってこの道は違うと気づいた瞬間に見舞われる絶望感から、彼らを救い出さなければならない。

 ソウル市体育会が数年前に引退選手の就職準備状況を調査したところ、簡単なコンピューター利用能力(ワードやエクセルなど)も最低水準だった。何よりも勉強との間に壁を作ってしまっているスポーツ選手が多すぎる。学生選手の5人に1人は最低学力基準にも及ばない。該当学年の教科別全体平均成績の50%(小学校)、40%(中学校)、30%(高校)を上回ればいいが、これに及ばない。選手たちが望む通りにスポーツできる環境を作ることが重要なだけに「スポーツ選手としての人生」と「学生としての人生」の調和を適切に取れるよう考え、努力することも必要だ。韓国文化体育観光部の担当者は、学生選手の授業時間数不足を補うためにオンライン講義(e-school)のような補完策があるとは言ったが、現場でこのシステムがどれほど無意味に放置されているのか、おそらく知らないのだろう。

李衛裁(イ・ウィジェ)スポーツ部長

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  • ▲シン・ユビン 写真=大韓卓球協会

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