物価が上昇、利上げ必要なのに…「実弾」使い切った各国中央銀行の苦悩

物価が上昇、利上げ必要なのに…「実弾」使い切った各国中央銀行の苦悩

 国際原油価格の高騰で物価が上昇し、韓国銀行や米連邦準備理事会(FRB)をはじめ各国の中央銀行は苦悩している。物価を抑えるためには金利を引き上げなければならないが、昨年以来インフレとの戦いであまりにも多くの「実弾」(利上げカード)を使ってしまい、追加利上げが難しくなっているからだ。とはいえ、利上げをためらえば、ようやく抑制できた物価が再び急上昇した1980年代の米国での悪夢が再現しかねない。

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 1970年代、米国では石油問題と金融緩和で79年に物価上昇率が13.3%まで上昇した。解決役として登場した「インフレファイター」のボルカーFRB議長は就任後の1年3カ月(79年9月~80年12月)に政策金利を年12.2%から年22%へと10%近く引き上げる劇薬を処方した。そうした努力で物価上昇率を83年には2%台まで下げることができた。物価がある程度安定したと考えたFRBは84年から86年にかけ、金利を約6%(11.6%→5.8%)引き下げた。すると、80年代後半に再びインフレが深刻化し、90年に入ってからは6%台を記録した。物価を完全に安定させないまま通貨政策の方向をむやみに転換するのは危険だという事例だ。

 米国の物価上昇率は昨年6月に9.1%まで上昇した後、今年6月には3%台まで低下したが、FRBが簡単に利上げをやめられないのはそのためだ。FRBはインフレ鈍化にもかかわらず、7月に0.25%の利上げを行っている。

 ところが、物価が再び上昇の兆しを見せても、各国の中央銀行が追加利上げのカードを切るのは難しい状況だ。高金利が2年近く続き、企業と家計の金利負担が増している。金利がさらに上昇すれば、消費と投資環境が大きく悪化し、景気低迷の泥沼に陥る恐れがある。延世大経済学部の成太胤(ソン・テユン)教授は「先手で利上げを行い、物価上昇圧力を抑えることが重要だ」としながらも、「弱くなった各国の経済体力を考慮すると、大部分の中央銀行は金利を上げることも下げることも難しい進退両難の状況に陥った」と指摘した。

金智燮(キム・ジソプ)記者

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