その頃、インドやトルコ、メキシコなどが先をこぞって製鉄所を建てようとして全て失敗に終わっていた。そんな中、韓国も製鉄所を建てるために金を借りに行ったのだ。世界的経済碩学でもあったユージン・ブラック氏の見通しを打ち破ったのは「朴正熙-鄭周永(チョン・ジュヨン)」「朴正熙-朴泰俊(パク・テジュン)」コンビが主役として活躍した「地面にヘディングの奇跡」だった。「地面にヘディング」と言えば、開発時代の強引な「押し付け」程度に考える人も多いが、必ずしもそうではない。何事も「地面にヘディング」式に押し付けるのは記者も反対だ。しかし、歴史に道を刻むということはほとんど不可能に近いものだった。新型コロナウイルス感染症によるパンデミックをそれでも早期に抑え込んだ「mRNAワクチン」を見てみよう。当時、世界的な医学者、保健学者の語録には「新型コロナウイルス感染症に対するワクチン開発は短期間では不可能」といった断言にあふれている。世の中を変えたものの背後には、こうした果敢で迅速な挑戦が見え隠れしているのだ。
少子高齢化を子孫に譲り渡す韓国は、未来世代に重荷を負わせて現場を後にするという悲しい運命を抱いている。そんなわれわれにできる最小限の責務とは一体何だろうか。その出発点は55年前のように「今は不可能に見えること」だと感じる。新しい挑戦の前に伴う戸惑いが、どんな副作用をもたらすかは今さら言うまでもない。迅速な決定と果敢な規制撤廃で再武装すれば、今後も「地面にヘディングの奇跡2.0」が幾つか続くだろう。最近話題になっている宇宙航空庁の設立も「宇宙経済の育成」という新たな概念への挑戦だ。しかし、宇宙航空庁の設立は再び先送りされようとしている。
イ・インヨル産業部長