うその常習犯を懲らしめることができなかった国のおぼつかない選挙【朝鮮日報コラム】

 うそを根絶する最も確実な方法は、うそを作って広めた人物を罰することだ。法律に違反したならば最大限重い刑を下すべきであり、刑事罰が難しいならば社会的評価を落とし、公の場から追放しなければならない。政治家ならば選挙を通じて処罰するという「必罰の慣行」を確立すべきだ。しかし、これほど多くの陰謀論が横行しても、工作の主役たちが不利益を受けた事例は見当たらない。

 2010年に韓国海軍の軍艦「天安」が沈没すると、民主党は陰謀論専門家のシン・サンチョルを調査委員に推薦し、「米軍介入説」と「イスラエル潜水艦衝突説」まで流布した。それでも責任は負わなかった。天安艦沈没が北朝鮮の仕業ではない可能性があるという趣旨で発言した薛勲(ソル・フン)は4選を果たし、「尹錫悦(ユン・ソンニョル)弾劾」を叫んでいる。「疲労破壊・座礁」デマに言及した姜琪正(カン・ギジョン)は光州市長に当選し、中国軍や北朝鮮軍の軍歌を作曲した鄭律成(チョン・ユルソン)の偶像化事業で先頭に立っている。

 慶尚北道星州郡のTHAAD基地の前で踊りながら「電磁波デマソング」を歌った朴柱民(パク・チュミン)、蘇秉勲(ソ・ビョンフン)、金漢正(キム・ハンジョン)の各議員、女優ユン・ジオの虚言を「正義の戦い」と称え、彼女を守る議員グループまで結成した南仁順(ナム・インスン)、李学永(イ・ハクヨン)、鄭春淑(チョン・チュンスク)の各議員、崔順実(チェ・スンシル)事件の際、「朴正熙(パク・チョンヒ)統治資金300兆ウォン」「チョン・ユラは朴槿恵(パク・クンヘ)の娘」などといった放言祭りで有名になった安敏錫(アン・ミンソク)議員なども当選を繰り返し、依然として議員バッジを着けている。最近フェイクニュース界の新星になった金宜謙(キム・ウィギョム)議員は「清潭洞酒席」デマが空振りに終わった後も活躍している。

 「セウォル号故意沈没説」から「呉世勲(オ・セフン)センテタン」までデマというデマに必ず登場する金於俊(キム・オジュン)はユーチューブでフォロワー135万人を従え、依然として強大な影響力を誇示している。所業を恥じてひっそりと暮らすべき人々が豊かに暮らしている。こうした陰謀論に便乗して政治的利益を得てきた政党が第一野党として君臨していることからして正常な状況ではない。

 昨年の大統領選直前に流れた「尹錫悦コーヒー」のフェイクニュースは、20年前の金大業事件のそっくりだ。20年たっても同じ選挙工作が繰り返されるのは、韓国社会がうその常習犯を追放する自浄能力を失ったことを意味する。金大業を「義人」と称賛した政党、狂牛病、天安、セウォル号、THAADのデマに便乗し、世間を惑わした政治家や扇動家に相応の責任を問うていたならば、フェイクニュースで選挙戦に揺さぶりをかけようとする民主主義破壊工作が試みられることはなかっただろう。うそつき勢力を懲らしめることができない国では次の選挙でどんな危うい出来事が起こるか分からない。

朴正薫(パク・チョンフン)論説室長

【図】「大庄洞事件は『コーヒーゲート』だ」 フェイクニュースを拡散したラジオ番組司会者たち

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