「国が病にかかった」という表現の元祖は英国だ。大戦後、世界初の福祉国の実現に乗り出した英国は、過度の福祉と高コスト・低効率で苦しんだ末に破綻の瀬戸際まで追い込まれた。その原因について、ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)のジョージ・アレン名誉教授が出した分析の一つに、ひときわ視線が引き付けられた。彼は著書『The British disease(英国病)』で「トインビーが語ったごとく、『歴史は、一つの挑戦に成功裏に対応し得たグループが次の挑戦にも成功裏に対応し得たケースがほとんどない』ことを示す」と記した。その上で、長期間の成功の上に「開拓者(大英帝国)の子孫」は安住した、と指摘した。
こうした観点から、「ドイツ病」の発病は、英国病とそっくりだ。過去の成功モデルや成果に酔って革新と変化を遠ざけた。米国と中国が電気自動車の開発を先導している間、ドイツはガソリン・軽油を使う内燃機関自動車に執着した。ドイツの産業は競争力を失い、市場から退けられていった。
欧州の先進国の苦難を見ていて、韓国はこうした前轍(ぜんてつ)を避けることができるだろうかと心配になった。既に前兆となる症状は見えている。世界の主要先進諸国は、1人当たりの国民所得が3万ドルに達した後、ほんの数年で4万ドルを突破した。米国は7年、日本と英国はそれぞれ3年、2年しかかからなかった。韓国は2017年に1人当たりの国民所得3万ドル時代を開いたが、その後、所得増加は足踏み状態だ。今のままでは、いつ4万ドルになるのかはっきりしない。昨年の時点で韓国の労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中33位だった。韓国はこれまでうまくやってきた。しかし革新と改革の側に足を踏み出さず、現実に安住するようになったのかもしれず、これまでの成功が恐ろしく思える。
張一鉉(チャン・イルヒョン)記者