違憲の「ビラ禁止法」をごり押ししたのに反省の弁が一言もない韓国統一部と外交部【10月3日付社説】

 文在寅(ムン・ジェイン)前政権が制定した「対北ビラ禁止法」に対して憲法裁判所が違憲決定を下してからすでに1週間が過ぎたが、3年前にこの法律制定をごり押しした当事者は誰も謝罪や遺憾表明など行っていない。担当部処(省庁)の韓国統一部(省に相当、以下同じ)は3年前、北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)労働党副部長が「法律でも作れ」と要求してからわずか4時間後、それまで予定にもなかったブリーフィングを行い「法律を準備中」と発表した。その後も統一部は当時与党だった共に民主党による法律制定の動きにも積極的に協力し、脱北団体などがビラ散布を強行した際には警察に捜査を依頼して団体の法人設立許可を取り消した。それが今になって人ごとのように素知らぬ顔をしているのだ。

【表】対北ビラ禁止法関連の推移

 歴代の民主党政権は北朝鮮政権が極度に嫌うビラ散布を何度も阻止しようとしてきたが、そのたびに統一部は「表現の自由を過度に制約する恐れがある」として反対した。そのため金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権も「ビラ禁止法」の制定や既存の法律でビラ散布を規制することはできなかった。盧武鉉政権はビラ散布用の風船が水素を使用することを口実に「高圧ガス安全管理法」で散布を阻止しようとしたが、これも違憲との指摘を避けるための窮余の策だった。

 その統一部が「金与正の下命」が下されると「軍事境界線近くの住民の安全のためには表現の自由を制約できる」とするおかしな論理をでっち上げ、ビラ禁止法制定の先頭に立った。またビラ散布のマイナス面だけを強調する解説資料を作成し、韓国に駐在する数十の各国大使館に配布した。この資料には「ビラを通じて北朝鮮にコロナウイルスが流入する恐れがある」とする北朝鮮の主張もそのまま記載した。北朝鮮と文在寅政権の顔色をうかがうため統一部は良心を捨て去ったのだ。

 「対北ビラ禁止法は北朝鮮の人権問題改善の努力を妨害する」との批判は韓国国内よりも国際社会の方がむしろ強かった。西側各国の多くが懸念を表明し、米国議会の超党派グループは聴聞会まで開催した。このグループの聴聞会で問題となったのはそれまで中国やアフリカ、南米などのいわゆる人権侵害国ばかりだった。それでも国連人権委員会副代表を務めた当時の韓国外交部長官は「表現の自由は絶対的なものではない」と反論した。憲法裁判所が今回の違憲決定を下した日に韓国外交部は「統一部に聞け」としてコメントを避けた。政権が変わったので適当にやり過ごすというのだ。そのひきょうでずうずうしい態度にはあきれて物が言えない。

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  • ▲京畿道坡州の統一東山で北朝鮮にビラを散布するため風船を飛ばす北朝鮮人権団体「自由北朝鮮運動連合」の会員/朝鮮DB

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