2018年の南北軍事合意に縛られる韓国…北朝鮮の奇襲になすすべなし

ハマスの奇襲を受けたイスラエル

2018年の南北軍事合意に縛られる韓国…北朝鮮の奇襲になすすべなし

 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの奇襲攻撃でイスラエル軍の防衛ラインが突破されたことを受け、北朝鮮に対する韓国軍の安全保障戦略も再考が迫られている。ガザ地区はソウル市のほぼ半分の面積に相当するが、イスラエルはこのガザ地区を非武装地帯(DMZ)のような緩衝地帯なしに高さ6メートルのコンクリートの壁で囲み、全方位の防衛ラインを構築している。ところがハマスは数千発のミサイルを使った奇襲攻撃に加え、地上でも戦闘員を投入することでこの防衛ラインを突破し、これが大規模な人命被害につながった。ハマスの数百倍の火力を持つ北朝鮮がゲリラ式波状攻撃を仕掛けてきた場合、ペンニョン島や坡州など最前線の地域はもちろん、首都圏の防衛さえ難しくなるとの懸念も浮上している。

【写真】2018年9月19日、平壌共同宣言に署名した直後に合意文書を示す文在寅大統領(当時)=左=と金総書記

 とりわけ2018年に当時の文在寅(ムン・ジェイン)政権が北朝鮮と締結した9・19南北軍事合意は前線地域における偵察作戦や砲兵訓練など、韓国軍や在韓米軍による防衛体制やその活動を制限しているため、韓国軍の防衛力が脆弱(ぜいじゃく)化したとの指摘もある。9・19合意は軍事境界線(MDL)から5キロ以内での砲撃訓練はもちろん、連隊級の機動訓練も全面的に禁止し、また韓国が優位にある空軍力でも戦闘機や偵察機の飛行をMDL西部以南20キロまでできなくした。そのため韓国軍とその周辺では「イスラエルとハマスの戦闘を受け9・19合意を全面的に再検討すべきだ」と求める声も相次いでいる。

 かつて国家情報院で第1次長を務めた南柱洪(ナム・ジュホン)氏は「9・19軍事合意は『北朝鮮は先制攻撃しない』という善意に基づくものだが、北朝鮮がゲリラ式の波状先制攻撃を仕掛けてきた場合、この9・19軍事合意が致命的な足かせになる恐れがある」と指摘した。

 韓国軍の内部資料などによると、北朝鮮は最前線に1100門の長射程砲を配備しており、うち240ミリ放射砲(多連装ロケット砲)は200門、170ミリ自走砲は140門前後に達するという。いずれもハマスのロケット砲に比べてサイズが大きく、正確さも優れている。これに加えて北朝鮮は「火山31」と呼ばれる戦術核弾頭も保有している。北朝鮮がペンニョン島や最前線地域を特殊部隊で占領、あるいは住民を拉致し、さらに「戦術核で韓国を攻撃する」などと脅迫してきた場合は迅速な対応が難しくなる恐れもある。

盧錫祚(ノ・ソクチョ)記者

<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • 2018年の南北軍事合意に縛られる韓国…北朝鮮の奇襲になすすべなし
  • 2018年の南北軍事合意に縛られる韓国…北朝鮮の奇襲になすすべなし

right

あわせて読みたい