売春女性の性病管理所が27年間野ざらしに…建物の扱い巡り頭抱える米軍基地村 /東豆川

当時は部隊から半径2キロ以内で売春を容認
性病にかかった女性を閉じ込めていた建物、27年間放置されて恐ろしく変貌

 9月15日、京畿道東豆川市上鳳巌洞の逍遥山の麓を訪れた。登山客らが行き来する道の傍らに、高さ2メートルの鉄のフェンスが残されていた。フェンスの内側には、廃虚と化した2階建てのコンクリート建造物が見えた。雑草が生い茂り、壁面が崩れ落ちたこの建物は、「洋公主」と呼ばれた米軍基地村の女性の、「性病管理所」の一つだ。1973年から韓国政府が運営し、96年に閉鎖された。

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 米軍将兵は、ここを「モンキーハウス」と呼んでいたという。ここに隔離された女性たちが、動物園のサルのようだったというのだ。

 東豆川は6・25戦争以降、代表的な在韓米軍の駐屯地になった。1961年の「淪落(りんらく)行為防止法」制定で、集娼村(多数の売春施設が集まっている地域。私娼街)などでの売春は違法になったが、基地村の半径2キロ以内は例外だった。それぞれの基地村ごとに「洋公主」が生まれた。

 1960年代前半に韓国政府は、米軍基地村周辺に性病管理所である「落検者収容所」を作った。基地村の女性たちは週2回、性病検査を受け、性病がないという検診証の発給を受けて初めて売春を行うことができた。性病にかかった女性は、検診に落ちた「落検者」に分類され、収容所に閉じ込められた。

 ここに収容された女性の中には、抗生剤であるペニシリンの過剰投与でショック死する人もいたという。収容所で生涯を終えた女性たちは、東豆川上牌洞の無縁故共同墓地に葬られた。

 大法院(最高裁に相当)は昨年9月、「韓国政府の基地村造成・運営・監理など違法行為で人間の尊厳が侵害された」として国の賠償責任を認めた。大法院は、国に対して原告117人に計6億4700万ウォン(現在のレートで約7180万円)を賠償せよと命じる判決を下した。

 この「落検者収容所」は1987年から事実上運営が中断し、民間所有の敷地にあった建物は27年間放置された。東豆川市は、この建物を撤去することを含め幾つかの案を検討している。一部の住民は「恥ずべき、醜い遺物」だという理由で撤去を主張している。一方で「痛ましい歴史もそのまま保存すべき」という意見も根強い。東豆川の出身で京畿北部平和市民行動に所属しているチェ・ヒシンさんは「米軍部隊が駐屯していた広岩洞や保山洞一帯が経験した興亡盛衰と『洋公主』の歴史は切り離せない」とし「これは恥ずべき歴史ではなく、その時代を必死に生きてきた証拠」と語った。

ク・アモ記者

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  • ▲9月15日に訪れた京畿道東豆川市の、かつて米軍慰安婦性病管理所だった建物の様子。廃虚と化した2階建てのコンクリート造りの建物は、雑草が生い茂り壁面が崩れ落ちていた。/写真=パク・サンフン記者

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