脱北者の強制送還は殺人行為、野蛮な中国と無気力な韓国政府【10月13日付社説】

 中国が自国の刑務所などに服役していた数百人の脱北者を今月9日夜に突然北朝鮮に強制送還したという。この強制送還については脱北者の韓国行きを支援していた複数の人権団体の主張が一致しているため、おそらく間違いないだろう。韓国政府は「確認中」としてコメントを避けているが、これに関係する徴候はすでに把握しているようだ。中国でコロナ渦の時に逮捕され、服役していた脱北者の数は2000人以上に上るという。そのほとんどが同じような運命に直面することが懸念されている。

 脱北者は北朝鮮政権による政治的・経済的圧力に耐えられず脱出したため、国際法的には明らかに難民だ。脱北者が北朝鮮に強制送還された場合、政治犯収容所に送られ虐待や拷問、暴行を受け、ひどいときは命を失うこともある。難民の地位に関する国際条約や拷問防止条約は拷問や迫害の懸念がある場所への強制送還を禁じている。中国はこの二つの条約いずれにも加入しているが、脱北者に対しては強制送還を続けてきた。人権よりも北朝鮮との関係を重視することがその理由だ。これでは到底文明国とは言えないだろう。

 今回の強制送還はある程度予測されていた。北朝鮮はコロナを理由に3年以上国境を封鎖していたが、最近開放したため大規模な強制送還は近いと誰もが考えていた。そのため韓国統一部(省に相当)の金暎浩(キム・ヨンホ)長官は先日中国に対し「脱北民の意志に反して強制送還してはならない。韓国行きを希望する脱北民は全員を受け入れる」と呼びかけた。しかし外交面でこれ以上の何らかの対策に取り組んだかは韓国政府に問いたださざるを得ない。憲法によると北朝鮮は大韓民国の未修復地域であり、北朝鮮住民は韓国国民だ。しかも韓国に行くため命懸けで国境を越えた北朝鮮住民は韓国政府が全力で救出するのが当然だ。ところが過去のどの政権もそうはしなかった。中国との外交摩擦を懸念し見て見ぬふりをしてきたのだ。

 今回の強制送還を受け韓国政府が行っている海外の脱北者保護政策も根本から見直す必要がでてきた。自由民主陣営の多くの国が脱北者の強制送還やその人権軽視で中国を名指しで批判してきたが、韓国だけはこのような動きから顔を背けてきた。静かな外交はいつも無条件で効果があるわけではない。韓国政府も国際社会と協力し、中国による野蛮な脱北者抑留と強制送還を非難し、国連などの場で正式に問題提起すべきだ。

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  • ▲ソウル市内の中国大使館近くで中国政府による脱北民強制送還非難集会を開く人権団体。9月19日撮影。/NEWSIS

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