文政権時代の統計操作当時、記者が経験したこと【朝鮮日報コラム】

 記者は宿命的にうそを聞く。取材源が意図的にうそをつけば、ファクトを見分けることさえ難しいことがある。特に信頼される機関や官庁がもっともらしい根拠で言い張れば、難関にぶつかる。文在寅(ムン・ジェイン)政権の不動産統計がそうだった。同じ住宅価格でも民間のKBによる統計を見れば市場が過熱していたが、政府系の韓国不動産院による統計はわずかな上昇にとどまった。理由を尋ねると、不動産院は専門調査員が主に実勢価格に基づく「取引可能価格」を算出するのに対し、KB不動産は公認仲介士が言い値を入力する方式だからだと話した。さらに不動産院は幾何平均、KB不動産は算術平均を採用しているというテクニカルな話まで織り込み、取材は迷宮入りした。疑わしかったが、まさか統計まで操作しているとは思わなかった。監査院による調査の結果、青瓦台と国土交通部の圧力で不動産院がいったん調査した上昇率を人為的に下げ、後には標本調査もせず任意に数字を当てはめた。高度な統計手法の違いなどはなかった。ただ統計を操作しただけだ。

【図】文政権時代、青瓦台からの圧力で国土交通部→不動産院へと連鎖した統計操作

 文在寅政権下では住宅価格を巡る市民団体・経済正義実践市民連合(経実連)と青瓦台の関係もミステリーだった。2021年6月、政府が直近4年間で住宅価格が17%上がったと発表すると、経実連は相場ベースで79%上昇したと反論。「大統領と青瓦台はこれ以上国民を欺かず、密室統計、操作歪曲(わいきょく)統計を是正すべき」と迫った。いくら経実連が革新陣営の市民団体だとしても、そんな不敬な主張に猛反発して当然だった青瓦台は何の反応も示さなかった。このミステリーも監査院の調査で解明された。その1年前、経実連は当時の金賢美(キム・ヒョンミ)国土交通部長官が「この3年間のソウルの住宅価格上昇率は11%」と発言すると、それに反論して金長官の更迭を要求した。青瓦台の金尚祚(キム・サンジョ)政策室長は「経実連の本部長が騒ぐときには強く反論しろ」と国土交通部の官僚を叱責した。その官僚が「国民が体感できない部分があり、反論すれば攻撃を受ける恐れがある」と言うと、金室長は「そんなに消極的なのか」と不満を示した。1年後にも同じことがあったが、金室長は自身の不動産問題で更迭された後だった。名分も悪役も青瓦台には残っていなかった。

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  • ▲国民の力の金学容議員が10日、文在寅政権当時の不動産統計操作の当事者というボードを掲げ、質疑を行っている/NEWSIS
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