■北朝鮮は黄海道でペンニョン島攻撃を想定した砲撃訓練を100回以上実施
これに対して北朝鮮は甕津半島など内陸で9・19合意の影響を受けず砲撃訓練を行っていた。中でも北朝鮮軍第4軍団はこの4年間で100回以上にわたり韓国の西北島嶼や仁川、京畿など首都圏を狙った砲撃訓練を実施した。第4軍団は複数の歩兵師団や砲兵旅団などで編成されており、240ミリ放射砲をはじめ数多くの野砲や海岸砲で武装している。2010年に故ソ・ジョンウ下士官など23人の死傷者が出た延坪島砲撃事件もこの第4軍団によるものだった。北朝鮮は島嶼地域のすぐ背後に屏風のように広がる黄海道の海岸を積極的に活用し、いつでも第2の延坪島砲撃を敢行できる体制を維持してきたのだ。文在寅政権の担当チームは9・19合意に向けた交渉で西海の緩衝区域を海上に限定したため、韓国軍だけにより多くの足かせをはめる不利な結果を招いていたのだ。
実際に北朝鮮は9・19合意からわずか1年あまりの2019年11月に緩衝水域に向け砲撃を行ったのを皮切りに、これまで西海だけで合計8回も合意を破り海岸砲による砲撃を行っていた。北朝鮮が開城の南北共同連絡事務所を爆破した事件も合わせれば、9・19合意違反の回数は合計18回になるが、その半分近くが黄海道の半島地形を活用し、延坪島など韓国の西北島嶼を狙った砲撃だったのだ。
韓国軍とその周辺では、9・19合意に向けた交渉が作戦計画や軍事セキュリティなどの面で法律に違反しない手続きと検討過程を経て行われたか、監査を通じて解明を求める声が上がっている。当時から韓国軍合同参謀本部と海兵隊から北朝鮮の要求に強く反対する意見が出たにもかかわらず、事実上北朝鮮の要求をほぼそのまま受け入れ合意に至ったからだ。ある韓国軍元幹部は「野党は9・19合意で西海が平和水域になったと主張しているが、西北島嶼の防衛体制はぜい弱になっていた」と指摘した。
盧錫祚(ノ・ソクチョ)記者