セウォル号沈没事故、腹いせと政略の犠牲者全員に下された無罪判決【11月3日付社説】

 セウォル号「救助失敗」の容疑で起訴された金錫均(キム・ソクキュン)元海洋警察庁長など元海警幹部らが、大法院(最高裁に相当)で無罪確定判決を受けた。検察が金・元庁長らを起訴してから3年9カ月、事故発生から9年を経ての無罪確定だ。常識ある人間なら、誰も予想できない判決だ。

 セウォル号事故は、最初の捜査で事故の原因と責任者が全て明らかになった。違法な改装を行って危険な状態になった船が、バラスト水を減らし、貨物すら固縛が疎かなまま運航した。その運航も、未熟な船員らが担当し、急激な方向転換を行った。事故が起きなかったとしたら、その方が異常だった。重い貨物の固縛が解けて一方へと急激に崩れ、船は急速に傾いて沈没した。船長と乗組員らは乗客へ速やかに退船を指示すべきだったが、この唯一のチャンスは放心と怠慢でむなしく浪費されてしまった。これ以上を求める恨みの声と非難は鬱憤晴らしにすぎず、真実とは関係ない。あの日、大統領と閣僚、海警庁長が別の人間であっても、結果は一つも変わり得なかっただろう。

 韓国社会ではいつもそうであるように、この事件を巡ってもデマが乱舞した。潜水艦衝突、故意の沈没など、デマは全て何も根拠のないでたらめだった。それでも、政治化されてしまったこの事故についての調査・捜査は9回も繰り返された。もう何も出てこないということは、この調査を押し付けた人々がよく分かっていただろう。当時、検察の2次捜査を担当した特捜団は「成立しない事件を強引に作ることはできない」と、疑惑の大部分を「嫌疑なし」で処理した。海警幹部らを起訴したのも無理なものだった。最終的に今回、無罪が確定した。セウォル号特別調査委の活動を妨害した容疑で特捜団が起訴した朴槿恵(パク・クンヘ)政権の大統領府関係者らも、1審で無罪が言い渡された状態だ。事故の原因と責任者が全て明らかになったのに、存在しない責任者をもっと作り出し、存在しない原因をもっと作り出そうとした無理な調査、無理な捜査が迎える当然の帰結だ。

 朴・元大統領が弾劾された日、当時の文在寅(ムン・ジェイン)大統領候補はセウォル号の現場を訪れて芳名録に「ありがとう」と書いた。大統領選挙の期間中には「セウォル号の真実究明のため圧倒的政権交代が必要」と発言した。惨事の原因に関してはもう何も出ないことは彼もよく分かっていたはずだ。それでも文在寅氏と「共に民主党」はセウォル号を選挙に利用しようとして調査のための調査、捜査のための捜査を繰り返した。当然、何も出てこなかった。「民主社会のための弁護士会」(民弁)出身者が担当する特別検察官も、何の結論もないまま終わった。民弁と進歩(革新)系団体の人物が大挙参加したセウォル号特別調査委と社会的惨事特別調査委も、それぞれ151億ウォン(現在のレートで約17億円。以下同じ)、572億ウォン(約65億円)の予算を使ったが、新たに明らかにしたものはない。惨事が政治的に利用され、学生運動出身者の飯の種へと転落したのだ。世界でも類例のないことだ。そんな民主党が、今度はハロウィン惨事特別法を進めると言っている。

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  • ▲4・16セウォル号惨事家族協議会の遺族らと4・16約束国民連帯の関係者らが11月2日、ソウル市瑞草区の大法院前で、セウォル号事故当時の海警上層部に対する大法院判決を巡る被害者遺族と市民の見解発表記者会見を行っている様子。/写真=ニュース1

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