グーグルやマイクロソフトなど世界的企業のCEO(最高経営責任者)には共通点がある。インド人であるという事実だ。14億人のインド人の中で有名な人材は国立インド工科大学に進む。世界で初めて月の南極に探査船を送り、太陽観測用の人工衛星を打ち上げる底力は、まさにインド工科大学にあると言っても過言ではない。
【表】QSアジア大学評価ランキング2023 TOP10入りはこの大学
インド工科大学は毎年2850万人の高校生のうち、卒業試験で上位25%に入った者だけが入学試験を受けることができ、最終的には1万6000人だけが全国にある23のキャンパスに入学できる。インド工科大学の入試競争率は、韓国の医学部での入試競争率とは比べ物にならないほど熾烈(しれつ)だ。彼らは卒業後、世界有数のIT企業に採用されたり起業したりして、世界的な起業家に成長。富と名誉を獲得する成功神話を歩んでいる。よってインドの子どもたちの切なる夢は、インド工科大学に入学してエンジニアになることだ。シリコンバレーがある米国でも、マサチューセッツ工科大学(MIT)をはじめとする世界的な工科大に優秀な人材を集め、エンジニアを育成している。
では、韓国はどうだろうか。「医学部偏向」という用語は、韓国の苦々しい理工系学部の現実を物語っている。「医・歯・韓・薬・数」に代弁される高校卒業生の成績順位による大学進学は、理工系学部の競争力低下につながっている。教育現場では基礎学力が低下し、学生たちの学力水準が過去に比べて全般的に低くなっているという意見が多い。
医学部への偏向現象に学齢人口の減少、韓国政府によるR&D(研究開発)予算の削減まで重なり、理工系学部の受難は激しさを増している。日増しに疲弊する理工系学部の教育現場で、工学部教授としてのもどかしさと切なさを禁じ得ない。韓国政府が自信を持って進めてきた半導体関連学科の活性化政策にもかかわらず、半導体関連学科の学部生が中途退学する割合が2021年の4.9%から22年には8.1%へと2倍近くに増えた。これは何も学部に限った現象ではない。工科大学一般大学院では定員を満たせない大学が増えており、大学院課程に入学した修士・博士課程の学生たちも中途退学するケースが増えている。就職を保証する学科まで学生たちが離脱したため、大学だけでなく技術者を確保しなければならない企業の立場も安泰とは言えない。事業を拡大して投資をしようにも、これを後押しできる人材が不足し、現場の混乱は加重するばかりだ。