避難所に投げ込まれた手りゅう弾を7回投げ返した22歳イスラエル軍人の最期

 パレスチナ武装勢力ハマスによるイスラエル奇襲攻撃が行われた10月7日、同僚や市民を守るため身をていしたイスラエル軍人のエピソードが、最近ようやく知られるようになった。この軍人は、イスラエル側の避難所になすすべなく投げ込まれる手りゅう弾を7回も拾って投げ返し、人々を守ったが、8発目の手りゅう弾で致命傷を負い、死亡した。

【動画】ハマス戦闘員が避難所内に投げた手りゅう弾、投げ返されて外で爆発

 ロイター通信やザ・タイムズ・オブ・イスラエル(TOI)などは15日(現地時間)、ハマスの奇襲攻撃当時、同僚や市民が逃げ込んだ避難所でハマスと戦闘を繰り広げたイスラエルの軍人アネル・シャピロ(Aner Elyakim Shapiro)さん(22)のエピソードに光を当てた。シャピロさんはイスラエル国防軍(IDF)「ナハル旅団」所属の下士官で、休暇中だった先月7日、ハマスの奇襲攻撃の報により急きょ現場に投入された。

 シャピロさんは、避難所の人々を救うため命を惜しまなかった。ハマス戦闘員が避難所内部へ投げ込んだ手りゅう弾を外に投げ返し続けた。安全ピンを抜いた手りゅう弾は、爆発するまでおよそ3-5秒かかる。この短い時間に、手りゅう弾を手でつかみ、避難所の外へ放り出したのだ。こうしたやり方でシャピロさんが防いだ手りゅう弾は7発に上った。

 しかしシャピロさんは、8発目の手りゅう弾は防げなかった。手りゅう弾は、シャピロさんが再び外へ投げ返そうとつかんだ瞬間、爆発した。シャピロさんは致命傷を負って現場で死亡した。TOIは「シャピロさんは生き残れなかったが、彼の行動は少なくとも7人の生命を救うことに貢献した」と伝えた。

 避難所の前に止めてあった車のドライブレコーダーには、当時の状況がありのまま収められていた。ドライブレコーダーの映像を見ると、ハマス戦闘員は何回も避難所内へ手りゅう弾を投げたが、手りゅう弾はそのまま投げ返されて外で爆発した。映像には、ハマス戦闘員らが避難所内に向けて無差別に銃を乱射する様子も収められている。避難所に隠れていたうちの一人が公開した写真には、誰もがうずくまる中、シャピロさんが単身ハマスに立ち向かっている様子が捉えられていた。

 シャピロさんの母親、シラさんは「息子が何人もの命を救って倒れたという事実が、せめてもの慰め」とし「私たちは、もう息子と会うことはできないが、彼が救った人々は引き続き子孫をもうけ、幸せな暮らしを送ることができる」と語った。その上で「私は、アネルが救ってくれた人々に対する愛で満ちている」とも述べた。シャピロさんのおかげで命が助かった人々は先月ずっと、弔意を示すため母親シラさんの元を訪れたという。

 当時避難所にいて助かったアガム・ヨセフソン(Agam Yosefzon)さんは「シャピロさんは多くを語らなかったけれども、私たちを落ち着かせてくれた」とし「私が最後に彼へかけた言葉は『ここに来てくれて感謝しています。あなたが私たちを冷静にしてくれています』だった。誰かにこれほどの高貴さを感じたことはない」と語った。別の生存者のイタマル・シャピラ(Itamar Shapira)さんは「彼は手りゅう弾を見つけて、3秒もかからず素早く投げ返した」「これまで自分の人生で目撃した中で、最も勇敢な行動だった。彼はヒーロー」と語った。

パク・ソンミン記者

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  • ハマスの攻撃を受けた当時のイスラエル側避難所内部の様子。 シャピロさんが一人で攻撃に対応している。/エックス

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