目撃証言をでっち上げて殺人犯を量産したNY警察官、総額1億ドル超の賠償金は誰が負担するのか

目撃証言をでっち上げて殺人犯を量産したNY警察官、総額1億ドル超の賠償金は誰が負担するのか

 【NEWSIS】目撃証言を捏造(ねつぞう)して数十人に殺人の罪を着せた警察官のせいで、ニューヨーク市とニューヨーク州が被害者12人に対して総額1億1100万ドル(約164億円)を賠償したことが分かった。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)が20日(現地時間)、報じた。

【写真】一般市民数十人を殺人犯に仕立て上げたルイス・スカーセラ氏

 目撃証言をでっち上げ、虚偽の自白を強要するという手口で犯罪者を量産していたのは、ルイス・スカーセラ元捜査官。被害者らはニューヨーク市から7310万ドル、ニューヨーク州から3690万ドルの賠償金を受け取った。また、ニューヨークの地下鉄で切符売り場の係員に火を放って殺害したとして1995年に収監された受刑者が再審無罪となったことから、ニューヨーク州は追加で数千万ドルを負担することになる予定だ。

 ただし、スカーセラ元捜査官は訴追されなかった。

 3万6000人の警察官が勤務するニューヨークで、スカーセラ氏がでっち上げた事件のうち、2014年から22年の間に逆転無罪の判決が出て500万ドル以上の賠償金が支払われた事件の割合は、賠償金ベースで全体の15%を占める。

 今年72歳になるスカーセラ氏は、1980年代から90年代にかけてブルックリン北警察署で殺人事件を担当していた。当時この地区では薬物犯罪が急増しており、殺人事件も頻発していた。1999年に引退したスカーセラ氏は、在職時「クローザー」と呼ばれていた。同僚の警察官たちが諦めた殺人事件を解決する「伝説の捜査官」だったのだ。スカーセラ氏が解決した事件は少なくとも175件以上ある。

 スカーセラ氏は1973年、父親と同じ警察官の職に就いた。自白を導き出すことが得意で、「ドクター・フィル」(当時有名だったタレント心理学者の名前)に似ていると評価されていた。

 しかし、脅迫や証言捏造によって自白を強要しているとの批判が絶えず、被告らがスカーセラ氏の前で自白した内容が法廷で覆されるケースも多かった。

 スカーセラ氏による事件のでっち上げが明るみに出たのは、ある受刑者が2013年に暴露した内容がきっかけだった。この受刑者は、スカーセラ氏が「1990年に起きたユダヤ教聖職者殺人の容疑者を選んでくれたら、監獄から出してやる。そして麻薬と売春ができるようにしてやる」と言ってきたと暴露した。検察が事件の再捜査に乗り出すと、大勢の証人が当時の証言を撤回した。

 スカーセラ氏によって犯人に仕立て上げられたデビッド・ランダ容疑者は2013年3月に釈放された。その後NYTは、スカーセラ氏が捜査した事件に薬物依存症の女性が頻繁に証人として登場していると報じた。それ以降、検察はスカーセラ氏が捜査して有罪判決が出た殺人事件の再捜査を始めた。そして数十件の再審請求が行われた。

 スカーセラ氏の捜査によって投獄され、後に逆転無罪となった元受刑者の量刑は合わせて268年に上る。ブルックリン検察は現在も、スカーセラ氏が担当した数十件の事件について再捜査を行っている。

 法律専門家は、被害者らに対する賠償の支払いだけが行われてスカーセラ氏が責任を問われていないことを批判した。

カン・ヨンジン記者

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