韓国は消滅するのか【萬物相】

 毒舌家として有名なイーロン・マスク氏が昨年5月、X(旧ツイッター)に、出生率(合計特殊出生率=1人の女性が一生の間に産む子どもの数)が最も低い韓国と香港に言及し「出生率が変わらないとすれば、3世代以内に韓国の人口は現在の6%未満まで減少するだろう」とつづった。韓国の人口は現在5100万人だが、これが約300万人まで縮むというわけだ。マスク氏は出生率の低い日本とイタリアについても「消滅するだろう」と指摘した。

 夫婦2人に子ども2人がいれば人口は維持されるように思えるが、生まれた子どもが全員成年まで育つわけではないため、人口維持基準の代替出生率は2.1とされている。現在、韓国の出生率は0.7まで低下した。このままでは1世代ごとに青少年の人口がおよそ3分の1に減少する。昨年生まれた子どもは25万人にも満たない(24万9186人)。2070年に生まれる子どもは年間10万人ほどだという。この傾向に歯止めをかけられなければ、100年前の水準に戻る日も遠くない。日帝強占期だった1910年、韓半島の人口は1330万人で、1920年には1700万人だった。マスク氏の辛らつな指摘を笑い飛ばすわけにはいかないのだ。

 1960年代には韓国の出生率は6.16に達していた。現在のアフリカ諸国の出生率とほぼ同じだ。「むやみに産むと、乞食(こじき)姿を免れない」というスローガンまで打ち立てて強力な産児制限を実施したおかげで、出生率は1970年に4.5、1984年には代替出生率水準の2.1まで急降下した。多数の子どもが生まれたため、1949年に2000万人を超えた韓国の人口は、2012年には5000万人を突破した。約60年で人口が2.5倍に膨らんだのだ。人口増加と経済成長が同時に進み、国富はみるみるうちに増大した。

 しかし、代替出生率の水準で止まることはなく、2001年には出生率が1.3まで低下し、2020年を起点に韓国は人口減少期に突入した。問題は、人口減少のスピードが世界で最も速いということだ。米紙ニューヨーク・タイムズのコラムニストが「韓国は消滅するのか」と題するコラムで、「韓国の出生率が0.7のまま推移することはないだろうが、2060年代に人口が3500万人程度まで減少するとの推算は現実的に思える」と指摘した。おおよそ1970年代の半ばに逆戻りするようなものだ。

 スウェーデンの学者夫妻、アルバ・ミュルダール氏とグンナー・ミュルダール氏は1934年の著書『人口問題の危機』で、「出生率の低下を防ぐためには、子どもを持たないことを望む複雑な心理的動機をなくすこと以外に方法はない」と主張した。子どもを持つことで掛かる費用を、減らすしかないという意味だ。国全体を家族に優しい社会へと刷新する一大改革を実現できなければ、「大韓民国の消滅」へと向かう速度にはブレーキがかからないだろう。

姜京希(カン・ギョンヒ)記者

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