台湾の若者たちの現実感覚【朝鮮日報コラム】

 北京で1年以上に特派員生活を経験した記者が今月3日に台湾を取材した。現地では中国本土との違いを全身で感じ取ることができた。とりわけ強く感じたのは五つの点だ。第一にインターネットの自由だ。中国ではVPN接続なしにグーグルやカカオなどにアクセスできないが、台湾では制限がない。2番目は宿泊の自由だ。中国では外国人は指定されたホテルにしか宿泊できないが、台湾ではどこでも宿泊できる。3番目は最高指導者の銅像前でダンスを踊る自由だ。中国では天安門広場に入ることすら難しいが。台北の国立国父記念館にある孫文の銅像前は毎日夕方からダンスの練習場になる。

【写真】孫文像の前でダンスの練習をする若者

 4番目は投票の自由だ。今月13日に台湾で4年に1回の総統選挙、立法委員(国会議員に相当)選挙が行われる。これに対して中国で投票の権限はごく少数の限られた人にしか与えられていない。昨年11月に北京市内でマンションの管理方式を決める選挙の投票会場を取材したが、50人以上の出席者のうち投票用紙の書き方を知る人は少なかった。5番目は集会の自由だ。台湾では選挙遊説の際に政治スローガンや対立候補に対する批判が激しく飛び交うが、中国では集会は個人の利益に関することのみ認められているようだ。

 しかし最も驚いたことは「本土とは違う台湾」を守ろうとする台湾の若者たちの動きだった。彼らは意外にも中国への抵抗にさほど関心はなかった。選挙期間中に力を入れることは既成の政治に対するけん制と代案の提示だった。多くの若者は反中の民進党と親中の国民党に対する習慣的な支持にとどまらず、「第3の軸」となる中立の民衆党を強く支持していた。「護国神山」と呼ばれる半導体大手TSMCのみに頼らず、AI(人工知能)などさまざまな産業に成長分野を見いだし、現政権が進める急進的な脱原発政策の撤回も求めている。

 民衆党の若い支持者たちが行う「新しい芽運動」「白紙革命」「55計画」などは台湾の経済、外交、福祉などに直接声を上げるという強い意志の表れだ。「新しい芽運動」は腐敗に反対する新しい政治のスタート地点になるという意味で、木の葉の帽子をかぶるキャンペーンで知られる。白紙革命は自分が望むさまざまな政策を白い紙に書いて見せる運動で、55計画は5日間毎日5分ずつ両親と政治についての議論をすることを呼びかけるものだ。

 台北の民衆党本部で取材したある若いボランティアは「中国を諸悪の根源とする見方からさらに進み、台湾をより強く豊かにすることが重要だ」と語った。たとえ外からの脅威があったとしても、内部がしっかりしていれば安全だと理解しているようだ。中でも印象深かったのは彼らの現実感覚だ。新北で話を聞いた30代のある女性は「台湾と中国の戦争は、台湾ではなく中国内部の事情と国際情勢によって変わってくる」「戦争を心配する時間があれば産業の多様化と国防力を強化する方法について考えるべきだ」と述べた。

 台湾は中国本土と多くの点で異なるが、最も大きな違いは政治に対する若者たちの情熱ではないだろうか。

北京=イ・ボルチャン特派員

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