「経営権継承だけのための合併ではない」 サムスントップが一審起訴事実全てで無罪となった理由とは

「経営権継承だけのための合併ではない」 サムスントップが一審起訴事実全てで無罪となった理由とは

 サムスン電子の「経営権違法継承事件」で、一審のソウル中央地裁は5日、李在鎔(イ・ジェヨン)会長に全面無罪の判決を言い渡した。検察は李会長が2015年、第一毛織とサムスン物産を合併した際、株価操作、背任、会計上の不正などの罪を犯したと主張したが、裁判所は起訴事実を全て退けた。

【サムスン経営権違法継承事件】李在鎔会長の一審裁判が残した記録

 ソウル中央地裁は両社の合併について、「李会長への(経営権継承)を唯一の目的でなされたとみる証拠が不足している」とし、「むしろさまざまな証拠や事実関係によれば、(合併には)サムスン物産の事業上の目的もあったとみるべきだ」とした。合併前にサムスン物産は成長停滞を打破し、危機を克服するためにさまざまな試みを行っており、第一毛織との協議を経て直接合併を推進したというのが裁判所の判断だ。

 その上でソウル中央地裁は「合併に合理的な目的が存在する以上、(李会長のサムスンに対する)支配力強化の目的が伴ったとしても、合併目的が全体的に不当だとは断定できない」と判断した。また、両社の合併過程でサムスンの未来戦略室は実務的なレベルで合併手続き、合併に伴う問題点などを検討しただけだとした。検察は李会長への経営権継承のためだけに、未来戦略室が法的手続きを無視して両社の合併を推進したと主張したが、裁判所はその根拠はないと結論づけた。

 ソウル中央地裁はまた、両社の合併過程で第一毛織の株価を人為的につり上げるため、虚偽の好材料を情報開示したとされる疑惑も無罪とした。判決は「(当時好材料として公示された)サムスンバイオエピスの米ナスダック上場計画は合併のはるか前から推進されてきたほか、ナスダック上場のための客観的条件も備えていた」とし、虚偽の情報開示とは言えないと指摘した。また、「(別の好材料とされた)竜仁開発計画も第一毛織が長期にわたり検討、推進してきたものであり、事業性の検討を経て、資金調達計画も立て、竜仁市から許認可を受け、ホテル工事を着手しており、その後一部見直されたが、計画自体は引き続き推進された」とし、同様に虚偽の情報開示とは言えないとした。

 ソウル中央地裁は両社の合併がサムスン物産とその株主に損害を及ぼす意図で進められたという検察側の主張も受け入れなかった。判決は「合併過程でサムスン物産とその株主の利益や意思が度外視されたことはなく、むしろ合併を通じたグループの支配力強化と経営権安定は、サムスン物産とその株主に利益になるとみられる」と判断した。

 また、サムスンバイオロジクスの会計不正疑惑については、「証拠からみて、サムスンバイオロジクスの財務担当者は会計士と正しく会計処理を行おうとしたとみられる」とし、「李会長などに粉飾会計の故意を認めることはできない」とした。

 今回の判決について、法曹界の一部からはいわゆる「国政介入事件」に関連する大法院全員合議体(大法廷に相当)の審理差し戻し判決と矛盾するという指摘も出ている。2019年8月の大法院判決には「李会長の支配権を強化する目的でサムスングループレベルでの組織的継承作業を進めた」という部分がある。その結果、李会長は朴槿恵(パク・クンヘ)元大統領とチェ・ソウォン氏への贈賄の罪で懲役2年6月が確定した。

 それについて、ソウル中央地裁は判決で、「当時の大法院判決は未来戦略室がサムスン物産の意思を排除したり、意思に反して継承作業をしたという意味ではなく、李会長のグループ支配権強化と合併に違法な方法が使われたか、株主を詐取したと判断したわけでもない」と説明した。

ホ・ウク記者

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