J-POPが流れない韓国のラジオ【寄稿】

 私は10年以上にわたり、さまざまなラジオ番組でおよそ2000-3000曲を紹介してきた。そのうち、日本の歌手の歌は片手で数えられるほどだ。日本語の歌は流すことができないという地上波ラジオ曲の不文律のためだ。何人かのプロデューサーに理由を尋ねると、「違法だ」という答えが返ってきた。どのような法律に違反するのかと聞くと、「国民感情法だ」という。日本語の歌を放送することを禁止する規定はないが、これに反対するリスナーから抗議が来たら、ラジオ局が困るということだ。

 日本の歌を全く紹介できなかったわけではない。しかし、歌詞が「レシレ/レミソラシソソ/ソソファレシラソ…」などと音階名だけで歌う日本のバンド「空気公団」の『音階小夜曲』や、「SEKAI NO OWARI(セカイノオワリ)」の『ANTI-HERO(アンチヒーロー)』のように歌詞が全て英語で書かれた曲などだ。アイスランドの電子音楽からアルゼンチンのロックまで、世界各国の音楽を紹介してきたが、一番近い国の音楽を聞かせる機会はほとんどなかった。

 今年は日本の大衆文化が韓国で全面開放されて20周年となる年だ。1998年のアニメーションを筆頭にした第1回開放を皮切りに、2004年の最後で全面開放となる第4回開放ではJ-POPも解禁された。当時、韓国国内では「韓国の文化が倭色(日本の色)に染まってしまう」「韓国の文化市場が浸食されて産業競争力が弱まるだろう」などと懸念する声が多かった。だが、それは杞憂(きゆう)だった。J-POPが停滞していた間にK-POPは世界進出を果たした。1963年に日本の歌手・坂本九が獲得した米ビルボード・シングルチャート1位の偉業を、アジアの歌手としては57年ぶりに韓国の男性アイドルグループBTS(防弾少年団)が達成した。韓国の多くのアイドルグループが日本最大のドーム球場を巡るコンサートツアーを行い、日本の若者たちのあこがれの的になった。

 韓国の若者たちも日本文化を楽しんでいる。交流サイト(SNS)や動画配信サービスでは『君の名は。』『THE FIRST SLAM DUNK(ザ・ファーストスラムダンク)』『すずめの戸締まり』など、日本のアニメーションが人気を集めている。そして、YOASOBI(ヨアソビ)、imase(イマセ)、Ado(アド)など日本の歌手たちが韓国の音楽チャートでトップ圏に入ったり、来韓公演を行ったりもしている。

 ラジオだけで日本語の歌を流さないでいるのは時代錯誤だ。韓日の若者たちの自然な文化交流は両国の文化的土壌を豊かにするだろう。「レシレ」式の西洋から来た音階名だけのセレナーデ(小夜曲)ではなく、その国ならではの独特で多様な音韻・情緒・言葉にあふれたセレナーデが両国で思う存分紹介され、響き渡ればいいと思う。「国民感情法」にも有効期限はあるのではないだろうか。

イム・ヒユン(音楽評論家)

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