世界中で子どもは「持つ者」だけに許された特権になりつつある【寄稿】【朝鮮日報】

良い大学・良い職場・良い仕事から得る達成感
MZ世代は生活の期待水準が高いため結婚と出産を避ける傾向
福祉が手厚いスウェーデンやフィンランドなど北欧でも出生率は低下傾向
少子化の克服は最初から不可能と認識し限られた支援リソースは別の社会問題に振り向けよ

 少子化の原因については多くの国が「住宅などさまざまな費用の拡大で結婚と出産の年齢が高くなるか、あるいは結婚そのものを避ける傾向」などを大きな要因と認識している。それに加え出産と育児への支援が不十分で、女性だけに過度な負担が負わされていることも大きな原因と見なされている。そのためどこの国も出産育児のための休暇期間を長くし、費用面での支援を拡大している。また出産する女性はもちろん男性にも育児休暇を与え多様な勤務形態を導入するなど、仕事と家庭を両立するための政策をさまざまな形で推し進めている。これに加え出産後に一時金として支払われる出産奨励金の額も増えている。社会的には男性に対しても家事や育児に取り組むよう求める雰囲気が高まりつつある。

 少子化という結果はどこの国も同じだが、その原因は常に変化してきた。過去には出産と育児への支援不足が少子化をもたらしたとすれば、今は結婚と出産を行う世代の認識の変化が少子化の原因となりつつある。どこの国でも25-30歳前後の世代の間で「結婚や出産は人生の不確実性を高める」という認識が広がっており、また人間関係の側面でもリスクに比べてプラス面が低いと考えられている。さらに結婚や出産だけでなく恋愛についても利益ではなく損失の方に大きな神経を使っているため、結婚と出産を避ける傾向はより一層強まるようになった。台湾では「結婚に関心がない」と回答した女性の割合は2011年には12.4%だったのが、19年は36.8%にまで高まった。フィンランドでは「子供を持ちたくない」と回答した割合は1980年代に生まれた世代では5%に満たなかったが、90年代前半に生まれた世代では25%にまで高くなった。

 その一方でこれらの世代が充足したいと考える社会的な期待水準は非常に高くなった。大学に進学するのは当然で、そこから良い職場に入り高い所得と自分の家も持たねばならない。また仕事でも十分な達成感を得なければならないという。どこの社会でもこのような要求は本来ならごく少数の限られた人だけが満たせるもので、たとえ満たせたとしても出産可能な時期が過ぎた40代中盤でやっと一般的になる。期待水準の達成が難しいと判断した若者が結婚を諦め、わずかな満足を確実に得られる趣味やペットに没頭する傾向は今や世界的なトレンドだ。世界的に見ても子供を持つことは全てを手にした者だけの特権になりつつあるのだ。

 大韓民国が直面している少子化という課題は世界の普遍的な問題であり、社会環境の変化に伴う認識の変化が積み重なることで表面化した人類にとって初めての共通課題だ。そのため限られた資源を「短期間での少子化克服」という不可能な課題に投入することは言うまでも無く非効率的だ。少子化の克服ではなく少子化社会にいかに適応するかを考え、どこにリソースを投入するか正しく判断することこそ韓国社会の課題であると認識しなければならない。

チェ・ジュンヨン法務法人YOUL CHON(ユルチョン)専門委員

【グラフィック】 北欧諸国とアジア主要国の合計特殊出生率

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