ロシア人が抱くプーチン大統領への愛情【萬物相】

 韓国在住のフランス人とロシア人がユーチューブで自国の国民性について語り合った。ロシア人は「ロシア人は自由が嫌いだ」と語った。自由に生きるよりも強い指導者に自らの運命を委ねたいという意味だ。これには歴史的な根拠がある。13世紀にモンゴル帝国がユーラシア大陸に建てた複数の汗国は1世紀後には全て滅亡したが、ロシアにあったキプチャク汗国だけは2世紀以上続きロシアを支配した。ロシア人特有の屈従的な態度が原因とも分析されている。

【表】相次ぐ不審死…プーチン大統領を批判して謎の死を遂げた人物と死亡当時の状況

 スターリンはロシア人のこのような民族性を見抜いていた。スターリンが1937年に大粛正を行い最大で120万人が命を失った時もロシア人は抵抗しなかった。トゥハチェフスキー元帥など戦争の英雄が相次いで処刑されても軍部は抵抗せず、逆に第2次世界大戦が起こった時に恐れて逃げ出したスターリンに「もう一度われわれを指揮してほしい」と求めた。スターリンはゲオルギー・ジューコフを司令官に任命した。ジューコフは「ドイツ軍の攻撃を体で防ぎ、ドイツ軍の戦力が弱まれば後方の兵力で反撃する」と自国民を盾にすることを提案した人物だ。

 ロシア人は西側諸国に対して被害者意識と劣等感を根強く持っている。第2次世界大戦の犠牲者はソ連が最も多かったが、これも「連合軍がソ連人の犠牲を増やすためノルマンディー上陸作戦を意図的に遅らせたからだ」とロシア人は信じている。温かいはずの6月に寒くなると「米国CIA(中央情報局)の陰謀だ」と考えるという話も聞いたことがある。ロシアのクリスマスは1月7日だが、これも西欧に対する反感が原因だという。

 プーチン大統領が5回目の大統領就任を果たし、在任期間30年の長期政権となる見通しとなった。プーチン大統領当選に対しては「不正選挙だから認められない」との声も聞かれる。透明な投票箱を使い、投票用紙も折り曲げないのだから投票とは言い難いだろう。ある独立系メディアは「加熱すればインクが跡形もなく消える感温インクが投票に使われた」と主張し、インクがライターの熱で消える様子を公開した。

 しかし圧倒的多数のロシア人がプーチン大統領を選択したのは事実だ。誰か強い人物が国の秩序を守り、国民はただそれに従えばよいという考えだ。ロシア人はロシアを欧州の強国にしたピョートル大帝を崇拝している。そのような指導者が再び登場し、西欧への劣等感から解放してほしいと願っているのだ。その思いを理解するプーチン大統領は「ピョートル大帝は私のロールモデル」と言い切る。ロシア人もロシアの栄光を失墜させたゴルバチョフよりも、ウクライナを侵略しナワリヌイ氏を殺害したプーチン大統領の方が好きだ。この「ロシア人の考え方」は今後も問題を起こし続けるだろう。

金泰勲(キム・テフン)論説委員

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