李華泳元副知事に懲役15年・罰金10億ウォン求刑 対北不正送金事件裁判

韓国検察「京畿道とサンバンウルの癒着…北に100億渡した後進的犯罪」

 韓国下着大手サンバンウル・グループの800万ドル(現在のレートで約12億1000万円。以下同じ)対北違法送金事件に関与して、サンバンウルから数億ウォン台(1億ウォン=約1120万円)の賄賂を受け取った疑いが持たれている李華泳(イ・ファヨン)元京畿道平和副知事に対し、韓国検察は8日、懲役15年を求刑した。2022年10月の起訴から1年6カ月を経てようやく裁判が終わる。一審判決は6月7日に言い渡される。

【写真】元駐英北朝鮮公使「李在明が大統領になっていれば、北はサンバンウルの件で脅迫したはず」

 この日、水原地裁で開かれた結審公判で、韓国検察は李・元副知事に対し収賄・政治資金法違反などの罪で懲役12年と罰金10億ウォン(約1億1200万円)、追徴金およそ3億3400万ウォン(約3740万円)、外国為替取引法違反・証拠隠滅教唆などの罪で懲役3年をそれぞれ求刑した。また韓国検察は、李・元副知事と共に起訴されたパン・ヨンチョル被告(サンバンウル副会長)に対し懲役2年6カ月の刑を言い渡してほしい、と裁判所に求めた。

 李・元副知事は、進歩(革新)系最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表が京畿道知事を務めていた2019年、知事訪朝の費用300万ドル(約4億5500万円)と北朝鮮スマートファーム事業の費用500万ドル(約7億5900万円)をサンバンウルが負担して北朝鮮側に出すように仕向けた疑いが持たれている。また李・元副知事は、サンバンウル側から法人カードや自動車など数億ウォン台の金品の提供を受け、自分の法人カード利用内訳を消そうとして証拠隠滅を試みた疑いも持たれている。

 検察は「この事件は、南北分断の現実において南北経済協力を接点として、京畿道とサンバンウル・グループが癒着して犯した代表的な後進的政経癒着犯罪」だとした。さらに「被告が北朝鮮に渡した100億ウォン(約11億2100万円)を超える資金がどのように使われたか、非常に懸念される」「朝鮮労働党に提供された資金は、統治資金と変わるところはなく、大韓民国と国際社会の安全保障を脅かす資金源となったであろうことは容易に考えられる」と糾弾した。

 検察は、裁判における李・元副知事の態度を「司法妨害行為」と定義した上で「裁判が終わるその瞬間まで他人のせいにして反省の気配もなく、残念だ。善処の余地はない」と断じた。

 李・元副知事は昨年6月、検察の取り調べで「サンバンウルが北朝鮮にカネを代納したと(李在明知事に)報告した」という趣旨の供述を行った。この事実が判明するや、妻のパク氏は法廷で夫に向けて「しっかりしろ」と大声を上げ、弁護士らが相次いで辞任し、裁判は1カ月以上も空転した。同年10月には、裁判官忌避申請を出して77日間にわたり裁判を遅延させたこともあった。結局、被告は「検察の懐柔と圧迫で虚偽の供述をした」と自らの立場を翻した。

 被告側弁護人はこの日、「検察が李在明を除去するため李華泳を対北送金事件の主犯に仕立てた」と述べた。弁護人は「民主党員でもなく李在明支持者でもないが、それでも李在明の無罪を主張する」「李在明の無罪が李華泳の無罪を意味するからだ」と主張した。このとき、傍聴席にいた3-4人が大きな音を立てて拍手をすると、裁判長は腹を立てて「裁判を妨害する行為だ。もう一度やったら退場を命ずる」と言った。

 李・元副知事は最終弁論で「いっそ死ねと求刑してくれれば気が楽だったろう」としつつ「事件が終わった後、必ず再捜査して真実を究明すべき」と訴えた。その上で「あさってが総選挙なのに、野党指導者を政治的意図でひどく弾圧する検察はもうやめてほしい」とも主張した。

水原=キム・スオン記者

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  • ▲李華泳・京畿道平和副知事。2018.10.7/京畿道提供

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