蔡英文逃亡説まで登場…台湾で拡散する中国発フェイクニュース【独自】

 今年1月に総統選をが行われた台湾で、過去3年間の友好国である米国を非難したり、親米傾向が強い与党民進党を攻撃したりする偽情報が大量に出回っていたことが分かった。こうした「フェイクニュース」は中国官営メディアが大半を最初に報道し、それが台湾住民が使うソーシャルメディアで拡散し、「インターネット世論」が形成されるという過程を踏んだ。総統選は親米・台湾独立傾向の頼清徳氏(民進党)が勝利したが、親中傾向の政治家が偽情報に基づき、争点づくりを行い、世論に少なからぬ影響を与えたと分析されている。

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 台湾の市民団体である台湾情報環境研究センター(台湾資訊環境研究中心・IORG)が16日、本紙に提供した資料によると、2021年から3年間に起きた12の主な事件と関連し、84件の反米的なストーリーがインターネット上で広がった。IORGは中国メディア1300社余り、ソーシャルメディアのアカウント500万個、フェイスブックページ120万個などを分析し、情報の流通経路を追跡した。ワシントンで取材に応じた游知澔ディレクターは「選挙を控え、米国に対する『別の世界観』を形成しようとする中国の情報操作が絶えず存在した。(そうした操作は)台湾にとどまらず、米国・カナダなど世界の中国関連コミュニティーも対象にしている」と話した。2019年に設立されたIORGは、人工知能(AI)、ビッグデータ技術などを活用し、毎日中国語圏のメディアとソーシャルメディアの1200万件以上のテキストを分析・処理している。游氏は最近ワシントンを訪れ、国際戦略問題研究所(CSIS)、ハドソン研究所などで「中国の選挙介入」をテーマに講演を行った。

 操作された情報の相当数は中国の官営メディア、中国の指導部や共産党の支援を受けているとみられるメディアが出所だった。例えば2021年6月、米議員3人を乗せた米空軍の大型輸送機、特殊作戦機である「C-17」が台湾に着陸すると、中国国防部は「火遊びをやめろ」と反発した。すると福建日報は「(台湾総統の)蔡英文が有事の際に米国の輸送機に乗って逃避する計画を立てた」と報じた。虚偽の内容だ。それを引用する形で、中国メディアが3カ月間に22回報道し、台湾のソーシャルメディアでも話題になった。オンライン空間にとどまらず、その後は親中傾向の国民党の副総統候補などがそれを根拠に「民進党は戦争が起きれば逃げるだろう」という主張を前面に掲げた。IORGは「正当な批判はできるが、米国と与党に対する操作された情報が公論の質を低下させ、民主主義に対する不信を増大させる」と指摘した。

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