「利己的」「安全志向」…「ソウル大学の人材像」報告書の教訓【コラム】

 最近、ソウル大学が来年度の学部大学設立を控え、今後の人材像を決めるため、53人の専門家などを対象にデプスインタビュー(1対1の対面調査)を行い、「ソウル大学の人材像」と題する報告書をまとめた。最終的に決められた「ソウル大学学部大学の人材像」は「挑戦と共感で未来を切り開く知性」だ。短い文章でつづられた人材像からは、研究を通じて明るみに出たソウル大生の短所と、これを克服して国家の未来に責任を負う人材に育てていかなければならないという大学側の意志がうかがえた。

 報告書には、国内外の専門家たちの視点から見つめたソウル大学卒業生に対する認識が盛り込まれた。好評価も見受けられた。答えが決まっていたり、ルーチンが存在したりする業務や問題に対する遂行能力に優れ、成功経験によって自信を持ち合わせている人が多いなどだ。一方で、目を引いたのは短所についての記述だった。周囲の人間と疎通しながら行う協業能力に欠け、答えが決まっていない問題に対しては解く勇気がなく、自らうまく解けるか疑問を提起することもあるなどといった内容だ。「利己的だ」「ナルシシズム(自己愛)が強い」「エリート主義に陥っている」「人間らしさが足りない」といった厳しい批判もあり、実に痛烈だった。

 報告書に盛り込まれた指摘について「先輩世代」である専門家たちが「後輩世代」である最近の学生たちに「コンデ(権威的な年長者)」のように訓戒したという逸話もあった。ソウル大生が利己的で、チャレンジ精神に欠けるといった指摘は、「1日や2日で形成されたものではないのではないか」といった自嘲混じりの愚痴も聞かれた。理解できる部分もある。しかし、だからと言って同報告書に盛り込まれた内容が、ただ単に聞き流してしまっても構わない内容ばかりだと言えるだろうか。

 約70年前、戦争の廃虚の中で最貧国だった大韓民国は、優れたリーダーと勤勉で誠実な国民性により高度経済成長を遂げた。その過程では、賢く誠実で、まるで歯車のように引き受けた役割をそつなく遂行する人材が必要だった。学生たちの長所を最大限に引き出し、こうした人材を社会に輩出してきた代表的な学校の一つがソウル大学だと言える。国家の発展に、ソウル大学の卒業生たちが果たした役割は決して小さくなかった。しかし、日々変化する第4次産業革命時代に過去のような人材像が正しいとは言い難い。ソウル大学のある教授は「社会は常に変化してきたのに対し、教育は30-40年前の水準にとどまっており、革新的な人材を輩出できなかった」と説明する。

 ソウル大学の人材像開発のための報告書は、このような問題意識の上で始まった。社会的難題を解決し、画期的な方法を提示する人材をどのように育てるかに対する問題意識だ。今回の研究に参加したある人物は、ソウル大学の人材像を「北極星」に例えた。教育の方向性や目標が何かを明確にし、どんな人材に対しどのように教え、社会に送り出すのかに対する羅針盤のようなものだ、といった意味だ。今回のソウル大学人材像の報告書が、ソウル大生だけのための「北極星」という次元を超え、大韓民国の北極星のような存在になることを期待する。

朴正薫(パク・チョンフン)記者

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  • ▲ソウル市冠岳区新林洞のソウル大学正門前。/ニュース1

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