「認知症予防」に効く箸【萬物相】

 箸の起源は約3000年前、中国の殷の時代にまでさかのぼる。殷の最後の王「紂」は象牙で作った箸を使った。「象牙の箸と玉の器を使うぜいたく」といった意味の四字熟語「象箸(ちょ)玉杯」は、これに由来する。百済の武寧王陵から箸が出土したことから、朝鮮半島でも支配層のための物だった。

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 今日ではぜいたくな食器という意味はなく、もっぱら使いこなすのがわずらわしい道具といった認識だ。日本と中国は割り箸を使うが、韓国では1970年代から割り箸を使うよりも、滑るため不便であったとしても耐久性に優れた金属製の箸を使うようになった。韓国人が扱う金属製の箸は、箸で魚の骨を取ることができる日本人の目にも驚異的に映るようだ。小さな煮豆やくだけた豆腐はもちろんのこと、滑りやすいウズラの卵からナマコに至るまで、箸を使って取れない物がない。箸でキムチを裂き、ゴマの葉を取ってスプーンにのせるのを見た日本人観光客が、記念品として韓国の金属製の箸を買っていく。

 小説家のキム・フンは、散文集「自転車旅行」の中で自転車と自分が一つになる境地を表現した。「転がる車輪の前で体と道は純潔なアナログ方式で連結されるが、(中略)車輪を転がす体はチェーンが媒介する駆動軸に沿って道の上に広がっていく」と書いた。多くの韓国人が箸を持った時、このような感覚を覚えるはずだ。フランスの記号学者ロラン・バルトも「箸が手から伸びた指のように動く」と驚嘆した。

 箸が手の技術を発展させただけではないようだ。先日本紙に「箸の使用が認知症の予防にも効果的といった記事が掲載された。手は人体部位の中で最も多い27個の骨が集まっている。箸で食事をすると、骨はもちろん、連結された64個の筋肉と関節が一緒に動く。一方、フォークはその半分だけを使用する。ある研究では脳波を測ってみると、フォークよりも箸を使う時、脳が20%以上も活性化したという。

 箸はメリットが多いが、強制的に使わせるのは望ましくない。歌手グループのDJDOCは箸の使用を強要するなとし「箸の使い方がうまくなかったら、ご飯を食べられませんか/下手でもうまく食べられます/(中略)私は私ですから、構わないでください」と歌った。われわれの先祖も意外と箸の使用には厳しくなかった。朝鮮王朝時代後期の実学者イ・ドクムは著書「四小節」で「スプーンと箸を片手で一緒に持つな」とだけ言った。キム・ホンドの風俗画には、一人の男が箸をうまく使えず、アルファベットの「X」の形に握っても、おかずを取って幸せそうにしている場面が出てくる。好きな人と会話しながら楽しむ食事が健康にもいい。その席上で、箸もうまくこなせるとすればこの上ないだろう。

金泰勲(キム・テフン)論説委員

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