「二度とセウォル号の悲劇がないように」…『海の懲毖録』を書いた元韓国海洋警察庁長

金・元海洋警察庁長の回顧録

【新刊】金錫均(キム・ソクキュン)著『セウォル号3488日の記録』(法律新聞社刊)

 著者は、『セウォル号3488日の記録』を「海の懲毖録(ちょうひろく)」と命名した。韓国では、懲毖録といえば、壬辰(じんしん)倭乱(文禄・慶長の役)について振り返った柳成竜(ユ・ソンリョン)の『懲毖録』を指す。本書を著した金錫均・元海洋警察庁長(海警庁長)は序文で「誤った部分は反省し、二度と悲劇が起きないように警戒するという観点」だとしつつ、著書をこのように紹介した。「懲毖」とは、過去にあった誤りや不正を警戒し、謹むという意味だ。二度と起きてはならないセウォル号惨事は、当時の責任当事者だけでなく、全ての韓国国民にトラウマとして残った。だが韓国社会に依然として残る問題は、事故それ自体よりも、惨事に直面して二つに分裂した韓国政界、非科学的かつ非合理的な事故後対応などにある。

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 304人の大切な命を奪っていったセウォル号惨事が発生してから10年経過したが、あの日の真実は依然として未決状態だ。これ以上起きてはならない悲劇の前で、遺族だけでなく、当時の当局責任者らもまた苦痛に見舞われている。懲毖録と命名したところには、つらい歴史に対する骨身に染みる反省とざんげも込められているようだ。

 セウォル号惨事10周年の4月16日に先立つ今年2月、事故当時の救助の責任者だった金・元海警庁長が、「救助の失敗者」という烙印(らくいん)の中で過去数年間の海警の救助過程とその後に起きたことについて記録した『セウォル号3488日の記録-海の懲毖録』を出版した。

 惨事から10年たったが、司法処理はまだ完結しておらず、当時の責任者らに対する世間の視線は依然として冷たい。「海警の救助失敗」に関連して金錫均・元海警庁長など海警幹部10人が、救助義務を尽くさず乗客304人を死亡させた容疑などで起訴されたが、大法院(最高裁に相当)で無罪が確定した。裁判部は、保護措置における不十分な点は海警レベルの問題であって、被告らに刑事責任を問うほどの業務上過失致死を認めるのは困難、と判断した。

 金・元庁長は、付録を除く249ページにわたって、セウォル号惨事当日、海警解体、捜索終了、再捜査、裁判などについて詳細に記録した。著者は本書で、事故の原因に関連して海警のいささか不十分な初動措置を一部認めた。それでも、検察の捜査と専門機関の調査、特別調査委員会、船体調査委員会の調査、判決文などを引用して、到底海には浮かべられない不良船が運航していたこと、過積載のためのバラスト水排出、貨物の固縛不良、未熟な運航、急速な転覆、船長と船員の無責任な脱出などを問題として挙げた。

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