海外では人気職種のブルーカラー、なぜ韓国社会では軽視されるのか【コラム】

 特高圧ケーブル作業工は韓国国内で平均賃金が最も高いブルーカラー(生産・技能職)の職業だ。1日8時間働けば、1カ月で平均840万ウォン(約90万円)を稼ぐことができる。賃金だけを見れば志願者は多いものと思われがちだが、ある特高圧ケーブル敷設専門業者の代表は記者に対し「資格証の教育まで会社の資金でさせてあげても志願者がいない」と、ため息をもらす。これまで数多くの熟練工が定年退職したことで、代表は60歳を超えているにもかかわらず、いまだに現場を回っている。溶接工や左官工など、その他のブルーカラーも事情は変わらない。

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 同様に高齢化を体験している米国や欧州のような海外の先進国では、人材不足でブルーカラーの賃金がホワイトカラー(事務・専門職)を超えてしまうほどにアップし、若者が集まっている。米国では四年制大学への入学率が下がり、代わって職業教育中心の二年制の専門大学(コミュニティー・カレッジ)への入学率が年々上昇。歴代最高を記録するほどだ。主な外信では「ブルーカラー・ボナンザ(大当たり)」「工具ベルト(toolbelt)世代」といった表現までが誕生した。供給が減れば価格(賃金)は高くなり需要を引き上げるという経済学の基本原理からは、韓国だけがなぜか外れている。

 韓国は世界で高齢化の速度が最も速い国だ。肉体労働人材の希少価値が大幅に高まらざるを得ない。しかし、依然として汗を流して金を稼ぐ職業は軽視の対象だ。給料を引き上げても志願しない。こうした不条理の背景には、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で最も高い大学進学率を誇り、学閥をあがめる文化が存在する。月間利用者数が15万人に上る生産・技能職専門求人求職プラットフォーム「Gochodaejoldotcom」を運営するDeepLeHRの関係者は「多くの韓国企業が生産・技能職の採用時にも四年制大学卒という学歴条件を要求している」と事情に触れる。まずは大学に通わなければならず、大学に通えば通ったで今度は当然事務職を狙わなければならないといった強迫観念が社会全体にまん延している。

 良質の人材を育て、韓国経済の高速成長をけん引した教育熱は、いつの間にか学閥万能主義へと変質し、韓国社会を駄目にする弊害となってしまったようだ。韓国銀行総裁がわざわざ乗り出して、首都圏への人口集中と住居価格の上昇問題を解決するためにも、大学入試に地域別の学生数の割合を反映した比例選抜制を導入するよう主張し「ソウル大、延世大、高麗大の教授たちが決断してくれれば済む」と言わざるを得ない国なのだ。現韓銀総裁はソウル大学で教授を務めた経験がある。

 医学部の定員拡大を巡って長期化した医療政策の葛藤と医療の空白も、ある意味強迫観念に似た学閥崇敬と脈略を同じくしている。最近、医師と医大生だけが加入可能なインターネット・コミュニティーでは「国民がさらに死んでこそ、医師に対して感謝と尊敬の意を抱くようになる」といった趣旨の書き込みが相次いで掲載された。もちろん、一部の無知な医師たちによる1次元的な反応だろう。しかし、韓国社会特有の学閥万能主義と、これに伴う「能力主義盲信」の一部分といった点で、共に深く考え直さなければならない不条理な断面に思えてならない。

アン・サンヒョン記者

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  • ▲昨年、釜山市で開かれた技能競技大会に参加した配管工(左)と国内のある造船所で溶接作業をしている熟練工(右)。/キム・ドンファン、アン・サンヒョン記者

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